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バイク泥棒のlpのレビュー・感想・評価

バイク泥棒(2020年製作の映画)
4.0
東京国際映画祭にて鑑賞。

TOKYOプレミア2020より、イギリス映画の『バイク泥棒』!
デリバリー業で生計を立てるルーマニアからロンドンに渡った移民の一家。ある日、生活の命綱であるバイクが盗まれてしまう・・・というあらすじを聞いた瞬間に、「これは面白そうだ!」と思い鑑賞することに。
期待通りの面白い作品でした!

映画冒頭。美しいロンドンの街並みと併せて、主人公一家の生活が如何にバイク頼みであるかを丁寧に描写する。バイクで街中を疾走するスピード感に、綺麗な音楽も加わり、この段階からもう惹き込まれる。後の展開への伏線となる要素の散りばめ方も申し分なく、サスペンスとしても上々の立ち上がりだ。

映画は「主人公のバイクが盗まれる事象」を核としてターニングポイントを迎える。
生活から「バイク」が無くなることで、主人公一家の生活の苦しさと、一家の主として主人公が抱える様々な葛藤を浮き彫りにする。それと同時に、バイクが盗まれた事を家族や上司に打ち明けられない主人公は徐々に追い込まれ、ドラマはサスペンスフルに加速していく。
そして、追い込まれた主人公が辿り着くラスト。詳細はネタバレ回避で書かないけれど、物語としては非常に鮮やかな着地に感じた。

惜しむらくは79分という尺の短さもあって、面白いけれどもドラマが全体的に薄味に感じてしまうことか。背景事象も含めて様々な要素に目配せはしているけれど、ストーリーの核となる部分へ密に絡んでいるようには映らず。どうしても「小粒のサスペンス」という範囲に収まってしまう印象だ。昨日観た『海辺の彼女たち』が、ミニマルな話をガッツリ掘り下げていたことが未だ記憶に新しいこともあってか、今作の掘り下げの浅さは余計に気になってしまった。
冒頭の生活描写が少し丁寧過ぎたので、そこを少し落として、その分だけ後半に厚みを持たせても良かったのではないかと。

ドラマとしての弱さは感じつつも、他方で娯楽的な面白さは充分に備わっているのでオススメです。
まだもう1回映画祭期間中に上映があり、チケットも残っているようなので気になる方はぜひ。
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