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ある職場/些細なこだわりのlpのレビュー・感想・評価

ある職場/些細なこだわり(2020年製作の映画)
4.3
東京国際映画祭にて鑑賞。

TOKYOプレミア2020より日本映画の『ある職場』!
「職場での多重ハラスメント」という題材に惹かれた今作。今回のTIFFでは一般公開時に絶対に実現しないであろうTOHOシネマズ六本木のスクリーン7での上映もあるということで、この機会に迷わず鑑賞!そしてこれが期待通りの傑作でした!

実際に某ホテルチェーン会社で起こったハラスメント事例をベースに、「ハラスメントの事実が発覚した後の被害者と周囲」をモノクロ(場面写真はカラーだったのでビックリ)の劇映画にして描く。
物語の舞台は江の島。会社の保養所であるリゾートマンションに、セクハラの被害を受けた女子社員を励ますべく、同僚達が集まる。しかし、話をする中で「集まった同僚の中に、被害者の個人情報を流出させているのでは?」という疑惑が浮上して・・・という話。上映後のQAで知ったこととして、実話ベースではあるけれど、脚本の詳細(会話や議論の内容)はエチュードで構成されているとのこと。

映画はここから様々な立場の登場人物達によるハラスメントを巡る議論を映す。この議論が興味深さと、個人情報を流出させている犯人を巡るサスペンスの面白さで、序盤から一気に映画の世界に惹き込まれる。
ただ、観ている間は「実話ベース」ということで自分を納得させていたけれど、議論の内容に関しては「オリジナル脚本の劇映画だったら、もう一声欲しい」と思う部分はあり。「100点満点!」という印象ではなかった。例えば、映画後半で主人公に対して提示される2つの選択肢などは、「そんな両極端な話ではないのでは?」と感じた。
逆に上司と部下の言い分が激突するシーンは、双方の言い分に「分かる」と思える部分があり身につまされる思いで映画を観ていた。様々な立場や事情が錯綜する「職場」でのトラブルは、単純に当事者間での問題で解決しないことが多く、複雑化しやすい難しさを改めて感じさせられた。

エチュードの要素が組み込まれていることもあり、ドキュメンタリータッチで登場人物達を描くのが、今作の演出面での特徴の1つ。
驚かされたのは、その特徴を逆手に取って、映画後半のある人物のキャラクター描写が抜群に効果的になっていることだ。素直に「初な姿」を捉えたと思っていたシーンが、後に全然違うものとして映る瞬間は見事にやられた!(ネタバレになるので詳細を書けないのが歯痒い)

社会派ドラマの傑作でした。オススメ!
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