MOCO

スター・トレック2/カーンの逆襲のMOCOのレビュー・感想・評価

3.5
「これが私のコバヤシ丸テストです。私の処置で合格できますか?
 たとえ死んでも、私は永遠にあなたの友人です。
 あなたに『長寿と繁栄を!』」


 映画「スタートレック」の制作費は日毎に膨らみ3,500万ドル以上(一説によれば4,500万ドル)を注ぎ込んだパラマウントは2作目をTV制作スタッフに任せ経費の削減を図ります。その為映画のスケールは前作に比べると小粒です。引き受け手のなかった監督は「タイム・アフター・タイム」のニコラス・メイヤー(本作品が監督2作品目)に決まります。監督の命題は「この映画を成功させ映画のシリーズ化」です。
 
 23世紀・・・
 ジェネシス計画の実験惑星を探索中のリライアント号のテレル艦長と一等航海士チェコフは転送で候補惑星セティアルファ6に降り立ちます。
 ガスに覆われ生命体のないはずのセティアルファ6には特定の地区に前世紀の微分子と思われる(生命体)反応があり「その何か」を他の惑星に移植すれば求める惑星の可能性が高いのです。
 そこには座礁した貨物船ボタニー・ベイがあり、二人はカーンとその一族に捕らえられてしまいます。
 セティアルファの危険な生命体の幼虫を耳から入れられた二人はカーンに従順になってしまいカーンの復讐の道具となってしまいます。

 『20世紀末の遺伝子操作で生まれた地球人カーン達70名は1996年新しい世界を求めて人工冬眠してボタニー・ベイ号で宇宙に旅立ち300年もの時間が経過していました。
 カーンは1992年から 96年まで、アジアから中東までを支配した野心的な独裁者で歴史上の人物です。
 15年前、漂流するボタニー・ベイ号はエンタープライズに発見されカーンは人工冬眠から目覚めさせられます。
 マクガイヴァーズ少尉は魅力的なカーンの虜になってしまいます。
 カーンはエンタープライズを制圧し、カーク船長の命を奪おうとしたのですが、カークの温情で少しばかり荒廃したセティアルファ5に乗組員全員と(本人の意思で)マクガイヴァーズ少尉は旅立っていく』・・・そんなTVシリーズの人気エピソードの後日譚が描かれたのが映画スタートレック2です。

 ニコラス・メイヤー監督は「スタートレック2」に5つの拘りを持って臨みます。
 「カークと息子の出会い」「ジェネシス惑星」「カーンの復讐」「スボックの愛弟子バルカン人サービック大尉」「スポックの死」。

 セティアルファ5はカーン達が到着した6カ月後、隣接する惑星アルファ6の爆発で軌道が変わり不毛の地になってしまい、妻となったマクガイヴァーズも惑星に唯一生き残った生命体に襲われ命を落としてしまったのです。
 テレル艦長とチェコフはアルファ6と思い込んでアルファ5に来てしまったのです。

 ジェネシス計画はドクター・マーカス(カークの元妻)と息子デビッド(カークの息子)が中心に進められた「神が一週間かけた天地創造」を僅か6分で行う画期的なプロジェクトです。
 ドクター・マーカスは生命反応がない、とある惑星の地下実験に成功し第二段階の惑星実験を行うための惑星をさがしていたのです。

 突然リライアント号のチェコフから「惑星探索を終え、宇宙艦隊指令部カーク提督の指示でジェネシス計画の資材はリライアント号に移され、今後の実験はリライアント号で行う」という連絡を受けたドクター・マーカスは折り返しカークに真相を確かめる連絡をするのですが、会話が成り立たないうちに通信を妨害されてしまいます。

 月をも緑溢れる星に変えることができるジェネシスを生命体が存在する惑星で起動すれば既存の生命体を崩壊させることができる脅威の兵器に成りうることに気がついたカーンはカークへの復習と共にジェネシス計画を略奪しようとします。

 ドクター・マーカスから「どうしてジェネシスをとりあげるの・・・」と、途切れ途切れの連絡を受けたカークは指令長官と連絡をとり、ドクター・マーカスのいる宇宙ステーションレギュラー1へ向かうことになります。再びエンタープライズの艦長として・・・。

 ワープ航行でレギュラー1に向かったエンタープライズはレギュラー1に近い宇宙空間で通信不能のリライアント号に遭遇します。カーンに乗っ取られていることを知らないカーク艦長のエンタープライズはフェイザー砲で心臓部を攻撃され大打撃を受けカーンから降伏の条件を提示されます。

 カーク艦長はカーンに要求されたジェネシス計画の資料の送信をするふりをしてリライアント号の防御スクリーンをリモートで下ろすとフェザー砲で反撃、大打撃を与えることに成功します。

 船の修理と指揮をスポックに任せるとカーク、マッコイ、サービック大尉(訓練生)は転送でレギュラー1に移るのですがレギュラー1は数名の犠牲者以外生き残っていたのは、カーンに仕込まれたテレル艦長とチェコフのみ、5人は転送装置の直前の履歴、不毛のレギラ星地下へ転送しマーカス達と合流しカークは息子デビッドに誤解されたままの対面をします。
 カーンの手先となっているテレル艦長とチェコフのおかげで会話は全てカーンに筒抜け(カークは最初からお見通し)、テレル艦長はカーク暗殺指示に逆らい自殺、チェコフは支配しきれなかった幼虫がはいだし助かります。

 カークは転送でジェネシスを奪われてしまうのですがカーンを欺き転送でエンタープライズに戻ります。

 エンタープライズとリライアント号の戦いはほぼ互角、瀕死のカーンはジェネシスを起動します。ジェネシスの起動は4分後爆発装置の起動が仕組まれているため、エンタープライズは直ちにワープ航法を使いリライアント号から距離をとらなければならないのですが、メインパワーエンジンの故障で放射能汚染漏れでエンタープライズはワープすることことができないのです。
 スポックはカークの知らないところで、自らを犠牲にして放射能に汚染された部屋にはいりメインパワーエンジンを修理するのですが・・・。

 爆発寸前ワープ航法が使用可能になったエンタープライズは
窮地を脱することが出来るのですが、カークはスポックとガラス越しの悲しい対面をすることになってしまいます。

 カプセルに入れられ送葬されるスボックがたどり着くのはジェネシスの作動が産み出した世界・・・。

 トレッキー(『スタートレック』シリーズの熱心なファン)から猛抗議となった「スポックの死」はトレッキーにとって映画化第三弾「ミスタースポックを探して」を観なければ収まりがつかない命題のシリーズ化をクリアする見事な展開です。

 ディレクターズエディション特別完全版(116分)を所有しているのですが何が変わっているのか観比べたことはありません。


 冒頭の「コバヤシ丸」テストは映画の後付けエピソードです。このテストは性格判断テストで中立地域のコバヤシ丸からのSOSといえども中立区域に戦艦が入るのは条約違反行為となり救いに行けばクリンゴンの巡洋艦からの魚雷攻撃を受け必ず乗組員が全滅するプログラムなのです。カークは3度このプログラムに挑戦して、唯一の合格者なのですがその方法は・・・。カークは負けることが嫌いな男なのです。
MOCO

MOCO