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赦しのlpのレビュー・感想・評価

赦し(2020年製作の映画)
4.3
東京国際映画祭にて鑑賞。

TOKYOプレミア2020からトルコの『赦し』。
ほぼ毎年1本はコンスタントにTIFFで上映されるトルコ映画。個人的には敬遠してしまうことが多いのだけれども、今作は家族のドラマがメインで面白そうだったので、鑑賞することに。そしてこれが予想以上に面白い傑作だった!

トルコの山間部に暮らす4人家族(父親、母親、幼い兄弟)の物語。ある日、長男が次男に向けて猟銃を発砲してしまい・・・というのが導入部。
映画はここから残された家族に焦点を当て、各々の事件が起きてからの変化を静かに映す。1人で過ごす時間が増える父親、完全に塞ぎ込んでしまう長男、何とか残された家族をまとめようとする母親。映像と役者たちの演技(表情)の力だけで、登場人物の内面を映していく。
台詞はほとんど無く、音楽も一切無し。しかし、退屈さは一切感じられず、むしろ決定的に崩壊する危険性を秘めた家族の関係性には、緊張感すら感じられる。この展開には見入ってしまった。
キャスト陣(特に父親役の表情)も素晴らしい。

そして極めつけはラスト。
事件以降の家族の心情を淡々と静かに映して終了!・・・としても、おそらく映画は成立するし、実際に物語を動かさない「アート映画」は多数あるけれど、今作は映画終盤で大きく物語を動かして映画を完結させる。
しっかりストーリーも意識した製作陣の姿勢をまず推したい。また、終盤の内容自体も素晴らしい。淡々と静かに積み上げてきた事件に対する家族それぞれの想いを、見事に一点に結実させている。
最後の最後はオープンラストであるけれど、個人的にはハッピーエンドとして解釈したことは書いておきたい。

基本的なプロットは「家族の悲劇」を題材にしたスタンダードなものだし、淡々とした展開には賛否が分かれると思いますが、個人的にはかなり嵌まった映画です。
難しいとは思うけれど、日本公開を期待したい!オススメ!
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