かりんとう

鈴木さんのかりんとうのレビュー・感想・評価

鈴木さん(2020年製作の映画)
3.0
いとうあさこは想像の上を行く「女優」だった。

むしろいとうあさこの演技力や独特の雰囲気がなければこの映画は成立しなかっただろう。
異色のディストピアムービーと形容されることが多いように見受けられるが、筆者にはディストピアよりも現在の日本のパラレルワールドのように映った。

メインビジュアルの肖像画や、いとうあさこが主演であることから、予備知識無しだと十中八九コメディだという先入観を持ってしまうが、観始めるとそうではないことに気づく。
もうもうと煙を吐く富士山には、なんとも言えない不安を覚える。
物語は終始暗く、我々の見慣れた日常の風景ながら、間違いなく不穏な空気が垂れ込めている。

この監督のことはよく知らないので、これは今の超高齢化社会を風刺した何かななのか、はたまた天皇制に意義を疑問を呈するものなのかはわからない。
でもなんとなくだけど、一周回ってこの映画にあまり深い意味はないのかも、と思ってしまう。

他に類を見ないという理由で3.0評価をつけたが、これを他人に勧めるかと訊かれたらNOと答える。
ハッピーエンドだったらまだ救いようがあったのかもしれないが、胸糞展開からの後味の悪さが残ることとなった。