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ノー・チョイスのlpのレビュー・感想・評価

ノー・チョイス(2020年製作の映画)
4.0
東京国際映画祭にて鑑賞。

TOKYOプレミア2020よりイラン映画『ノー・チョイス』!
TOKYOプレミア2020には同じくイラン映画の『ティティ』が出品されているけれど、個人的な本命は今作。サスペンスフルなストーリーに乗せて、イラン社会を描くということで興味津々。大いに期待して鑑賞!そしてこれが期待通りの面白い作品だった!

主人公はホームレスの少女。困窮する彼女は代理出産により生計を立てんとするが、ある問題が発覚する。映画はこの導入部を皮切りに、主人公を取り巻く夫、弁護士、医者の3者も巻き込みつつドラマを展開していく。
少女が抱えた問題を巡るサスペンスが、イラン社会の問題点を次から次へと映し出すことに繋がる話運びが見事。ただその一方で、サスペンスとしては終始同じ問題を議論している感があり、話が停滞してしまった印象だ。また、事の真相に早い段階で気付けてしまうシーンがあることもイマイチ。
娯楽性の観点では少し惜しい作品だ。

演出面・見せ方の部分は非常に特徴的だ。
まず、ストーリーが進むにつれてリレーの如く、話の主軸となるキャラクターが変わっていく。主人公→弁護士→医者と物語を捉える視点が変化する。
カメラワークも特徴的で急なクローズアップや、登場人物を執拗に追いかけるショットなどが散見される。
こういった演出面でも興味深い作品だ。

ワールドフォーカスに出品されているベルリン受賞の『悪は存在せず』や、ヴェネツィア受賞の『荒れ地』には及ばないけれど、今作も十分に面白い作品でした。
日本公開は期待したいけれど、過去にTIFFで上映された『メルボルン』や『冷たい汗』といった傑作イラン映画が、ことごとく未公開に終わってしまっているので、残念ながら今作も日本公開の望みは薄そうです。。。機会があればぜひ。
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