Kitty

バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティのKittyのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

原作への愛は伝わるしやりたいことはよく分かるけど、条件が揃ってなさすぎた印象。

インタビューなどからもよく分かる通り、しっかりと原作ファンなのだというのが画面からも伝わってくる。
原作へのリスペクト、オマージュ、シーンの再現は見事。
洋館と警察署の造形、洋館のゾンビとのファーストコンタクトには感心した。

キャラ改変については、ゲームだからこそ違和感なく観られていた部分(レオンが新人警官なのにサバイバル能力が高すぎたり、ただの研究員だったウェスカーのスパイ能力の異様な高さだったり)を、実際の人間に落とし込むにあたっての改変だと思うと一応納得はいく。にしても変えすぎだとは思うが…
個人的には、せっかくレオンをへっぽこキャラにしたなら事件を通して原作のような勇敢な戦士への成長を見せてほしかったと思うし、ウェスカーとジルの関係性ももっとしっかり描いて欲しかった。
総じて、ゲームのオマージュや再現に注力し過ぎていて人物描写が希薄。
展開しかなくて心情の変遷が分かりづらいし、結局何も変わっていないように思う。

またゾンビ以外のB.O.W.の扱いについても、原作キャラを出したいのは分かったし見られて嬉しかったが、全体的に扱いがぞんざい。
出演ノルマを達成するためだけに出てきたのかと思うくらい出演時間や見せ場が少ない。
そんな中でも特に気になったのは、物語を進めるギミックにするための設定改変。
具体的には、研究所への道を開くために友達に親切にする理性的なリサと、クリスに踏ん切りをつけさせるために急に悪役みたいなことを流暢に喋るGウィリアム。
この改変はちょっと受け入れられなかった。
あと、G第2と第3形態を足して2で割ったような見た目のラスボスも、大した活躍も主人公たちを追い詰めるでもなくロケットランチャーであっさり退場。
いくらなんでもな扱いだった。

上記のモンスター、人物の描写不足は、完全に1と2を並行して描いたことによる尺不足が原因だろう。
こんなことなら、尺を伸ばすか1と2のどちらかのみを描けば良かったのでは?と思わざるを得ない。

ただ、良い点ももちろんあった。
1つは真摯に原作のカットの再現やオマージュをしてくれていたこと。
ファンとして見たい画を見せてくれたのは非常にうれしかった。

もう1つは、これもある意味では原作再現の部類なのだがホラー描写。
ライトが壊れた後にマズルフラッシュで暗闇が一瞬明るくなって状況が断片的に分かるところやその後のライター、リチャードが落ちている銃を調べていてゾンビに襲われるところ、警察署地下の拘置所のシーン、リッカーが迫ってきて蛍光灯が揺れるところなど、暗闇と音、ピントや構図を巧く使っている箇所が多く、原作ゲームのような恐怖感をあくまで映画的に表現しようという製作陣の気概が良かった。

ポールWSアンダーソン版1作目に比べると、構成や映画的な見せ場など、一つの映像作品としての完成度は全面的にポール版に軍配が上がる。
ことバイオハザードの実写という一点において、この映画は良い出来ではあると思う。
ただゲームをなるべく映画的に忠実に実写化しようとした結果、弊害として説明不足すぎてゲームプレイ済みの人向けの映画になってしまっていることはかなり問題ではあると思う。
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