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映画大好きポンポさんのNowLoadingのレビュー・感想・評価

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)
4.5
 本日のもう一本。

 イヤイヤイヤ待って!これ凄いわ!これ程までの傑作を見逃していたなんて!映画製作者、映画好き、なにより映画オタクへの大いなる映画讃歌。映画に夢を投影する、なれなかった自分、或いはあったかもしれない世界をフィルムに落とし込んで作品を作り出来上がった映画はもう一人の自分となると。

 映画を形作る映像、音楽、又は4DXのような体験と形態は様々だが、本作は特に編集にスポットを集中的に当てている。小気味よいカットの数々は無駄を徹底的に削ぎ落とし、見ている人を飽きさせない。というか本作のある意味存在意義だ。90分で作ることにこだわっている。カットの方法は映画を見慣れない人にはちょっと早く置いてけぼりになってしまうような気もする位だ。おかげでDVDを借りて見ていたからか自分自身も主人公ジーン君のように何回も巻き戻す羽目になった。

 ただし、「SHIROBAKO」のようにじっくりと作品づくりを見せることの出来るようにするのではなく、90分縛りを設けているからこその何処を観客に見せたいのかはハッキリしていた。とはいいつつこの作品自体彼のように捨てきれないシーンも残っていたので全体的に駆け足になってしまったのだろう。

 でもこの映画を作った人からのメッセージである、俺たちが見たいものを見せたいんだ!という強い強い思いが溢れているのが画面から滅茶苦茶伝わる。少々荒く作っているからこその勢いの強さを感じ取れた。それは「シン・ウルトラマン」のような独りよがりな作品ととても良く似ている。

 90分の縛りが生きているからこそ独りよがりになる前に話が終わるのがホントに奇跡的。ともかく、ポンポさんが言っていた「幸福な人間は作品を完成出来ない。社会や自分の生き様に不満があるからこそ作品に自分自身を載せ、世に送り出すことができる」というセリフが今の僕にドンピシャで心に響くわけだ。

 出来うるなら可能な限り多くの人にこの作品を見てもらいたいがなかなかテンポが速すぎてなんとなくしか作品を消化出来ないような人も出てくるのではないか。他の誰かと一緒に観るよりもこの映画は一人でじっくり作品と向き合える時間がある人は必見であると断言できる。
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