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映画大好きポンポさんのますのレビュー・感想・評価

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)
1.2
※映画鑑賞後原作を見たのでレビューを一部修正。そもそも原作が長編映画化に向いていない+監督が原作を膨らませようとした結果このような悲しい失敗になってしまったんだなぁ…という気持ちです。これが悪い方向の化学反応…。

※実際自分としては★2.2、一般的には★3.3クラスだと思うのですが、全体評価が高すぎて犠牲者が増えそうなので大きめに減点しています

結果的になろう系×映画制作になってしまった映画。
本ッッッッ当にキツくて90分が地獄のように長く、心の底から時間を返してくれ〜と思ってしまった!!!!まだ見てない人は見なくていいと思うぞ!!!!世の中の高評価に釣られるのは私だけでいい!!!!

以下微妙にネタバレあり。


どうしてこの話を"クリエイティブの狂気(良いものを作るために他のものを切り捨てろ)の話"にしてしまったのか…。どうして…。まあ話の膨らませようが他になかったからだろうけどね…。

いや絵はねすごく綺麗。色使いもすごくいい。いわゆる今時のエモい絵作りが上手。ゆえに巨匠監督が「感覚を研ぎ澄まして見るんだ」的なことを言うシーンには説得力が出ていた。
またシーンとして部分部分いいところもある。映画撮影で屋根から落ちて泥投げあうシーンと、後半の編集シーンの一部(劇中劇)と、アランが奮闘するシーンはちゃんと良さがあった。(しかしこの映画の中で一番狂気的なのがアランなのは笑う。ひとりだけリスク背負いすぎとる。)

しかしとにかく浅い……浅すぎる……そして「凄い奴」の描写が下手……フィルムカットの演出もクソダサい……羞恥心で顔が歪む……音楽もタイアップ?かなんかで入れなきゃならなかったのだろうが合っていないこと……

冒頭のOPからもう全然引き込まれず(日本のミュージカルの貧弱さを思い知らされる)、さらにそこからずっとなろう系展開で、マーティン・ブラドッグ以外誰一人として力量があるように見えないのがとにかくキツかった。(冒頭のB級映画も凡百映画臭がすごいし、15秒トレーラーがあれでいいとかどういうこと??映画のトレーラー見たことあるんか???キレそう! スター俳優の演技経歴なぞるところをあからさまな凄い奴描写にしちゃってんのどうなの??あそこはサラッとやらないと本当に格好悪い。いっそ薄ら寒さを覚えてしまったわ。)
原作でボカしてる部分や実はそんなに大したこと言ってないんだけど絵柄や雰囲気でいい感じに誤魔化してる部分を真っ向から描こうとした結果、ひたすら寒くなってしまっていた。

またオリジナルパートで「誰に届けたいのか」という創作者にとって大事な話も出ていたが、ジーンくんの具体的行動が薄い+凄さも伝わってきてないため「何かを命懸けで作ることに憧れを抱きつつまだ何も作れていないワナビ向けのなろう小説」という感じがビシバシ出てしまった。これがキツかった。

またポンポさんがほとんどずっとジーンくんを活躍させるための装置になってるのも辛い。「自分が最高に面白いと思える映画作り」へのモチベもふんわりとしか見えないのでラストよかったねーとも思えない。
(ここでも話の主軸を「クリエイティブの狂気」にしてしまった弊害が出ていて、プロデューサーとしてのポンポさんの魅力が立ち切らず単なるクリエイティブを助ける人ポジになってしまっている。)
正直ポンポさんのキャラは「サラッと新人監督にニャカデミー賞を取らせる」だけで十分際立たせられたように思えてならない。

そして監督はハリウッド映画あんまり好きじゃなさそうだ…という感想が残った…。
(マイスター、冒頭は雰囲気あってよかったがラストがダサい。なんだその衝撃波は。現実で上映していたらフィルマークスで3.2くらいだと思う。あとジーンくんは何も持ってないだけで、マイスターみたいに"幸福の切り捨て"はしてないからな??マイスターと同じだと思うなよ。クリエイティブにおけるカット作業を"幸福の切り捨て"と言い張るのは無理があるぞ。役者ならまだ役とのシンクロという体で成り立つが。)
またこの流れはただ行動を起こさずにウジウジしてるだけの人達を「そうだ俺たちは持ってないから強いんだ!!」「持ってる奴とは違うパワーがあるんだ!!」と悪い夢を見せてしまいそうだなと感じた。(友達いなくて家で野球見てばかりの人に球団オーナーが「お前は野球監督の才能がある!」と言ってるような感じ。)まぁ動き出す原動力になるならいいかもだが…。

結論としては「原作がうまく隠したりあえて描かなかったりした部分を、映画化に伴って果敢にも(無謀にも)形にしてしまった+本来の良さとは別軸のテーマを置いてしまったために原作を活かせず(後付け設定も増え)めちゃめちゃボロが出た」「原作がそもそも映画制作tips的な内容+大きな山がなく淡々としているので長編映画化に向いてなかった」の2点に尽きると感じた。

クリエイティブの狂気を描いた映画を見たいならバビロンとハケンアニメを見ることをオススメする。
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