となりの

映画大好きポンポさんのとなりののレビュー・感想・評価

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)
5.0
素晴らしい作品だった。

映画的なアニメではなく、まさにアニメ的映画で、二次元の平面はすべてがスクリーンになり、背景も人物もすべてが映画的操作の対象となって、想像力のままに縦横無尽に映像は分節・連節される。
カットとモンタージュが映画の本質のひとつであるとすれば、このアニメは、その表現形式の固有性を示している。
おそらく、カメラの撮影深度に対応する、アニメのレイヤーは、そのレイヤーそのものも操作対象にできるのが大きいのだろう。
(ただし、セル画的というよりは、デジタル作画のレイヤー操作に近いだろうか)

ともあれ、冒頭のカットの快感を味わうジーンと、アニメ的カットのリズムに身を委ねる観客は一体化する。
まったくもって素晴らしい。

また、アニメでの表現の限界にも意識的にチャレンジしているのも素晴らしい。
アニメであるからこそ、たとえばジーンの内面世界へのダイブはシームレスに自然に撮られるわけだが、反対に、ポンポさんが扉を開けるシーンなどは、かのじょの腕の長さなど極めて不自然である。
それでも、ポンポさんの明朗快活なキャラクター、デフォルメされた動きが、その不自然を自然に見せている。(ポンポさんが膨れ上がるあのシーンの素晴らしさ!)

そのほかにも、泥投のシーンなどのアニメーションも素晴らしい。
そうした、写実的なアニメーションは劇中作でのみ活かされている。
そのために、マーティンとダルベールでは、キャラデザも変わるわけだが、違和感を与えない程度に寄せる塩梅が素晴らしい。

また、編集パートの試行錯誤を、作中劇とシンクロさせる脚本も優れている。
ありきたりの展開であるが見せ場であり、そこを冗長にせずに上手く組み立てている。
そうした密度と緊張感を持続させられる尺の問題は、実写とは異なるアニメに固有の問題でもあるだろう。

ストーリーは王道で、映画を私にとっての当て書きとして観ることに集約されるわけだが、これだけの映画であるから言うことがない。
となりの

となりの