ぺん

弱くて強い女たちのぺんのレビュー・感想・評価

弱くて強い女たち(2020年製作の映画)
4.2
老齢の母、三姉妹と孫娘と。
何十年も前に家族を捨てて出ていき、死んでしまった父親の葬式を巡り、三世代に渡る家族の悲喜交々が描かれる。

物語はスロースターターで、前半は何人もの登場人物の関係を追いつつ、かなり眠たくなってしまった。
ただ中盤以降に相関関係が理解できてくるとすっと話に入れる。
女手一つで三姉妹を育て上げた母のプライド、夫に逃げられた妻としての屈辱、複雑な感情を含ませる主人公リンおばさん。
激動の台湾で生きてきた女性たちの人生が、その姿に現れる気がする。保守的な血縁関係が色濃い東アジアの中で、本音を語れなかった女性の秘めた想いも様々でした。

男性不在の作品であるが、女性たちのやり取りや話の流れの中に、逃げ出した父親の姿も見えてくる。
国家に尽くす職についていた彼は、本当は違う立場に憧れていたのではないだろうか…彼が逃げ出した理由も少しずつ察せてくる。

父親似の長女、真面目すぎる次女、ハツラツとした三女。
姉妹それぞれの事情や両親への感情の違い、擦り合わせが静かに行われる。
新世代代表の孫娘も屈託がなく、おばあちゃん大好きで可愛い。
ゴキ出現のくだりと道教VS仏教の読経バトルは笑った。台湾のお葬式ってのも色々あるんだな〜。
それと台湾ならではの食事やお菓子が美味しそう。家族の映画だからかみんなで何かを食べるシーンが多い。

後半に訪れるある人物とリンの出会い、そこからの静かな決意。序盤と対比されるカラオケシーンには爽やかな余韻が残る。
許せるのかと言ったら自分は難しいと思うけど、だからこそリンさんが選んだ道はまっさらで心地の良いエンディングに見えました。

プロデューサー、次女役、エンディングソングの歌い手として参加しているのがあのビビアンスー。多彩に活躍されていてるなぁ。
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