空海花

トゥルーノースの空海花のレビュー・感想・評価

トゥルーノース(2020年製作の映画)
4.5
生存者の証言を基に、北朝鮮強制収容所で過酷な日々を生きる人々の姿を3Dアニメとして完成させた衝撃作。
アヌシー国際アニメーション映画祭長編コントルシャン部門ノミネート、
東京国際映画祭 ワールド・フォーカス部門正式出品作品。
ワルシャワ、ナッシュビル、韓国などでも受賞を果たし、世界中で話題になった。
在日コリアン4世の清水ハン英治が監督・脚本・プロデュースを務める。

「政治の話はしませんよ
 かわりに物語をお伝えします
 私の家族の物語です」
1995年、金正日体制下の北朝鮮・平壌で家族と幸せに暮らしていたパク一家。しかし父が逮捕され、母と兄のヨハン、妹のミヒは強制収容所に送還されてしまう。

アニメーションは3DCGで制作されているが、少し角張ったポリゴン。
凄惨さはアニメーションにすることで、生々しさは和らぐし
最初の語りかけと相まって、寓話性を持たせる。
しかし、なめらかさのない描写は北朝鮮の空気感とも妙に合っていたし、
表情は驚くほど細やかで感情や性格はしっかりと息づいている。
ポリゴンの無機質さで、多少は客観的に観ていられる。
実写で子役の子が出て来たら、怒りで前が見えなくなるかもしれない。

人の所業について、考えてしまう。
善い方にも悪い方にも…
その辺りの描き分けはすごく上手いとは言えないかもしれないが、
驚かされるところもあったし、胸が苦しくなったし、涙も流れた。
何より、人の素晴らしい部分と
彼らを助けたいという、作り手の真摯な想いを感じてしまっては傑作と認めざるを得ない。

人は空腹になってはいけない…
ミヒが貼り付けた花片が綺麗だった。

監督は「偉人伝マンガ」シリーズの出版にも携わっていたことがあるそうで
この手段、伝え方は、マンガというメディアの可能性を肌で感じていたのだなぁと納得した。

1950年代から1984年にかけて行われた「帰還事業」
その時日本から帰還した人たちが胸に抱いていたもの─にハッと気付かされた。
強制収容所には、日本の拉致被害者を思わせる場面も。
それ以前から朝鮮半島は日本と深く関わっていた場所である。
日本人は世代問わず誰でも、機会があれば観てほしい。もちろん観るのに国籍など関係ないが。
みんなが知っていれば何か変わることもあるのではないだろうか。

エンドロールの衛星写真だけは生々しく
ただの創作ではないことを物語る。

「TRUE NORTH(トゥルーノース)」とは、「真に重要な目標」を指す英語の慣用句。
自分がどの位置にいようともコンパスの針は常に北を指すことから「決して変わらない目指す方向、正しい方向」「生きる意味」という意味で使われるようになった─とのこと。


2021レビュー#145
2021鑑賞No.312/劇場鑑賞#48


上映を心待ちにしていて、ようやく鑑賞できました⭐
でも、またもトークショーを逃してしまった…😢
空海花

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