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トゥルーノースのKtoのレビュー・感想・評価

トゥルーノース(2020年製作の映画)
4.5
【説明】
北朝鮮の強制収容所内で生きる労働者達を、ある少年の視点から描いた話

実際に収容所で生活していた男が、「政治の話はしません。物語を伝えます。」とTEDトークで話し始める形で幕を開ける。

【感想】
北朝鮮版「夜と霧」と言っても過言ではない傑作だった。

POVで始まるプロローグもアニメならではの演出、非情な看守達や悲惨な姿になった労働者達を最も素直に表現できるのがアニメーションの強みかも…。
アニメを「メディアの能力として抜群」と評していた監督の意欲作ともなってる。
(参考 https://otocoto.jp/interview/diroftruenorth/ )

生存権を含めた基本的人権を根こそぎ奪われ「使い捨てだ」と明言されながらも働き続けなければならない環境。拷問下でも自殺は許されない生き地獄。
ノルマ、連帯責任、階級性、見せしめ、"Total Control Zone"という更なる処刑制度… アウシュビッツもそうだけど、強制収容所における人間の残虐性は、我々の想像を越えるよね…。本当に怖い。

更に怖いのが、次世代(支配階級の子供達の世代)にも思想差別が根強く遺伝していること。豚の鳴き真似をさせるシーンは鳥肌が立つ。

体制に器用に取り入るヨハンも、それを許せない周囲の人も皆其々の立場における正義を全うしているに過ぎず、悪人は存在しない(少なくとも労働者の中には)。
強制収容所での人生に救いがあるかは分からないが、救いを見出し共有しようとするヨハン達の姿はとても美しい。

こうしてる今でも、あの強制収容所で苦しんでいる人がいることは俄に信じ難いが、それが現実であり、それを伝えてくれる勇気ある人々を讃えなければいけないなと思った。
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