AKANE

トゥルーノースのAKANEのレビュー・感想・評価

トゥルーノース(2020年製作の映画)
4.0
人間が動物以下の価値になる、北朝鮮強制収容所。その存在と問題を知り、無視できなくなる映画です。フォロワーさんが後回しにせず今みて!とレビューされていたので、すぐに観ました(レビューは遅くなったけど)製作に10年という歳月をかけ、脱北者からの聞き取りで細部まで再現されたその内容は簡単には言葉にはできない惨たらしいもの。2023年のドイツにアウシュヴィッツ収容所はありませんが、現在の北朝鮮には変わらずあるんです。

第二次世界大戦後、北朝鮮が労働力を求め1959年に始まりその後30年近く実施された「帰還事業」で日本から北朝鮮に帰国した約9万3000人の中には、その配偶者や子供など、日本のパスポートを持つ約6800人の日本国籍保有者も含まれていました。日本で差別を受けながら生活するより「生涯安泰、医療費無料、職がたくさんある」と両国が宣伝する朝鮮に帰った方が良い暮らしができると期待したからです。当時、そのように朝鮮総連は北朝鮮を「地上の楽園」と宣伝し、日本の政界も「帰還」を推奨し、マスコミも肯定的に報じました。しかし海を渡り帰国した人々が向かう先には、安寧の地などなく、監視に続く監視、誰も信用できない楽園とは正反対の地獄、強制収容所が待ち受けていたのです。

そんなことを今まで微塵も知らなかった日本国籍の日本人の両親の元でのほほ〜んと生まれ育った私は、テロや拉致問題や頻繁に発射させる弾道ミサイルなどの報道により、どこか北朝鮮という国=世界から孤立した単体の悪い国&洗脳された国民、というイメージをずっと疑いもせずに持っていました。でも、そもそも日本が朝鮮を植民地化したことがきっかけでたくさんの朝鮮人が日本に来て、終戦後日本から北朝鮮に戻ったひとたちが酷い扱いを受けているのだとしたら、帰還を促した日本政府に罪はないのでしょうか?日本政府にも当時、在日朝鮮・韓国人の生活保護の支出負担を軽減する思惑があり、事業を後押ししたと言われています。しかも両国を仲介をしたのはよく耳にする赤十字機関です。

今も北朝鮮の強制収容所では12万人もの人が不当なことで政治犯として収容され、重労働を課され、極寒と飢えに苦しみ、虐待、強姦、拷問、公開処刑の恐怖に怯えて暮らす、そんな生活が今現在も続いています。日本では拉致問題ばかり取り上げているのに帰還事業のことはほとんど話題にならないですよね?自ら移住を決めたのだから自己責任、というのが日本政府の出した答えだそうです。普段知り得ない日本と北朝鮮の関係、その実態をこのアニメーション映画を通じて1人でも知れたらいいなと思います。北朝鮮の問題だから、日本は一切無関係ではないと私は感じました。
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