ぼのご

湖底の空のぼのごのレビュー・感想・評価

湖底の空(2019年製作の映画)
4.3
国籍や性別の問題、悔やんでも悔やみきれない過去、様々な要因で心に痛みを抱えている人たちに優しく寄り添っているような映画で最高でした。

空の抱えている葛藤は複雑だった。それで空に恋に落ちた望月は初めこそ少し戸惑うけど、その後の受け入れ方が完全に吹っ切れていて素晴らしかった。性別がなんだろうが名前がなんだろうが何処に住んでいようが関係ないっていう立ち位置と愛に満ちた行動力、観ていてこっちが惚れてしまうところだった笑
空に会いに上海から韓国の安東に来て「上海から意外と近いんですね」って言えちゃう心の持ち様が素敵だし、速攻で「近くないです」って返す空も微笑まし過ぎた。

人物の顔のアップが多い映画だったけど、空の表情が途轍もなく繊細で、彼女が出ている場面に関しては特にアップで撮ることに意味があるように感じた。イ・テギョンさんは今後評価されておかしくない役者だと思う。

望月の中国での下宿先で大家が言った「上手くいかないことも多いけどそんなもんさ。最後は収まるところにすべて収まるんだから、大丈夫だよ」というような台詞とか、言葉の経緯も含めてすっごい優しかった。なんとなくビートルズの『レットイットビー』を思い出した。
それと空が妹の海への罪悪感から解放される場面、空のおかげで幸せな道を歩めたということで海が「どうせ起きていても眠っていてもろくなことないんだから、想像することが重要だよ」って台詞を残すのも『イマジン』の歌詞を思い出して、偶然なのかビートルズの曲を二つも連想したな。いずれにしても、どっちも個人的にかなり心に響く場面だった。

ゲストで空のお母さん役のみょんふぁさんが来ていて、作中では片言の日本語を喋るけど在日の方ということで完全に日本語ネイティブでした。生い立ちからマイノリティであることを意識することが多かったけど、段々「マイノリティ」という言葉自体がややこしく感じてきたとおっしゃっていて、たしかになと思った。いつか全ての差別や偏見が無くなれば、マイノリティって言葉も必要ないもんなぁ。そんな日が来ると良いんだけど。
いずれまたもう一度観たい。パンフレット買えば良かったな〜。
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