緑

あこがれの空の下 教科書のない小学校の一年の緑のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

私立和光小学校の1年間。

子どもたちの自主性最優先。
いらちには辛抱ならない職場だろう。
自分なら3日と……いや、1日も勤まらなさそう。

出てきた先生方がすごい。
ただ話すだけでなく視覚でわかりやすくする。
漫然と授業を繰り返すのではなく
教師間の授業参観を行いアドバイスし合う。
学年で連携を取って授業を進める。
教科書を使わずプリントを作成。
模造紙に教科書代わりの本の文章をそのまま書き写す。
子どもたちの声を丁寧に拾って大量に板書。
うまく説明できない子の発言をわかりやすく翻訳。

わからないことがある人を
「はてなの人」と呼ぶのはすごくよかった。
「わからない人」と言われて手を挙げるのは躊躇しても
「はてなの人」なら手を挙げやすそう。

「自分事」という言葉が何度か出てきた。
前々からある言葉にするなら「当事者意識」あたりか。
インタビュー時の発言として出てきたが、
子どもに使うにも「当事者意識」より「自分事」のほうが
よほど伝わりやすいのではないか。
まだ新しく批判も多い言葉ではある。
しかし他人事の反対語としてわかりやすくていいと思う。
新語や新しい使われ方に慎重な自分も
抵抗なく使っていることに気づいた。

子どもたちのフォローも真摯できめ細かい。
学習旅行で語り部からガマでの凄惨な体験を聞き
感情移入しすぎて離脱した子への対応が素晴らしかった。
戻れと強制することはなく、
離脱した子が得たものを認める姿勢、
子どもと関わる大人は真似してほしい。

子どもたちに
まだお兄さんっぽさがあると言われて、
雑に「ありがとうございます」と言う藤田先生。
終業式の日に子どもたちひとりひとりに
クッキーを焼いてくる山下先生。
三線を弾いたら子どもたちに
容赦なくディスられる先生(名前失念)。
ほかの先生たちもみんなキャラが立っていた。

学校の思想としてはリベラルっぽい。
世田谷区は革新系が強いから
学校もやりやすいんじゃなかろうか。

子どもたちは素直で伸びやか。
運動会で負けたチームの子はガチ泣き。
泣く直前のスピーチですごく早口になっていて、
子役だけでなく、
このリアリティを出せる大人の役者も思い浮かばず、
どうしてこういうリアルさを表現できないのかと
考えてしまった。

発言をちゃんと聞いてもらえて、
かなりの頻度で褒めてもらえて、
「はてな」はみんなで考える。
こんな至れり尽くせりな教育を受けた子たちが
和光小学校を離れたあと、
そこまで親切ではない外の世界で
ギャップに苦しんだりしないのか心配になるほど。
みんなうまく折り合えるのだろうか。

実に興味深く、
ときに笑ったり泣いたりしながら観られた本作。
英語教育導入に強く反対していた先生の
反対の理由も個別インタビューで聞いて欲しかった。

ナレーションが観た者の感想の方向性を
誘導するような口調だったのはいただけない。
ボリュームもちょっと大きい。
緑