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マーメイド・イン・パリのtomie77のネタバレレビュー・内容・結末

マーメイド・イン・パリ(2020年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

歌声で男を魅了して命を奪う人魚ルラと、度重なる恋に破れて愛する心を失った男ガスパール。偶然出会った二人の異色なラブストーリー。
ルラの歌声を聴くと男達は恋に落ちて心臓が破れ絶命する。しかし人を愛することをやめたガスパールはルラの歌声を聴いてもピンピンしているという話の始まりがまず面白かった。夫の命をルラに奪われた女医が仇打ちのためにルラを追う復讐劇もダークな味わいを加え、ラブストーリーだけで終わらない意外性も良い。
ただラブストーリーも復讐劇も今ひとつ物足りなかったのが残念。
ルラとガスパールは互いに惹かれはじめるが、本気の恋に落ちればガスパールの命が無い…愛し合いながら愛してはいけないという葛藤が見どころの一つのはずが、いまいち切実さが伝わってこなかった。
女医の復讐劇も、銃も持たない女性1人追ってきても怖くないしむしろ彼女が可哀想になる。ルラとガスパールへの敵意も最後はうやむやに。彼女の悲しみや怒りにどう決着をつけるのか期待していたのに中途半端で残念だった。

おもちゃでいっぱいのバスルーム、飛び出す絵本、ルラが見る古い映画など美術面は可愛くロマンチック。
ガスパールや祖母・母、店の人達は想像力と創造性を発揮して人を楽しませる『サプライザー』であり、ガスパールは愛を忘れてサプライザーの力を失っている。しかしルラとの出会いで愛を取り戻しサプライザーとして復活を遂げるが、その愛の代償に命の危機が迫る…この筋書きは素晴らしいので、いっそ復讐劇を無くして、ガスパールの表現者としての生き様や愛の苦悩を深く描いてほしかった。
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