シーケー

マーメイド・イン・パリのシーケーのネタバレレビュー・内容・結末

マーメイド・イン・パリ(2020年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

すごくかわいくていい映画なんだけど、何かが足りない。エマニュエル・べアールの「天使とデート」みたいなロマンティックなかわいい恋愛映画としての評価の話は他の人におまかせするとして、水辺映画としても同じように何かが足りない映画だった。

セーヌ川をルーブル美術館へと渡る美しい橋ポンデザール。その脇に船上のレストランがあってその階下に秘密の音楽バーがある。内装や名物のハンバーガー、東洋人のコーラス女性など、すべてがすばらしくわくわくする設定だ。でも映像的に周りを映さないのでどんな水辺なのかが伝わってこないのが残念すぎる。橋は水辺の華だけど、橋が周りの空間含めてどういう場所なのかがわからないと価値は伝わらない。橋も船上レストランも、人魚の声によって引き込まれる場所も水辺空間がよくわからないままだ。ローラースケートの設定も水辺空間をもっと表現するのに使えるはずだと思ってしまう。

大事な別れの場面もパリから近い海としたらノルマンディだと思うけど、もう少し岩っぽい急峻な感じか砂浜にはできなかったのだろうか。あの草おい茂る感じは海じゃなくて川か湖みたいだった。それならいっそセーヌ川のロマンティックなシーンにしてくれたらよかったのに。

最後に船を買い取って旅立つ場面、ストーリーとしてはすごく好きなんだけど、海向けな船ではない気がしていて、何かすっきりしなかった。この時だけ少し川の様子がわかる映像で、ある種の開放感を表現したのかもしれないけど、そこまでの水辺を箱庭的な狭い映像にしてしまうほどの意味はないと思った。せっかくのパリの映画なのに。

水辺的にはそういう残念なところもあるけど、映像全体としてはかわいくていい映画です。