MasaichiYaguchi

KayのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

Kay(2020年製作の映画)
3.8
IMDb公認のニューヨーク・シネマトグラフィー賞の最優秀作品賞をはじめ、国際映画祭で多くの賞に輝いた鯨岡弘識監督による短編は、母とヒロインのケイを棄てた父の死によって呼び起こされた記憶の断片を辿る心の旅を描く。
真夏の或る日、ケイは母から父・太一の遺品整理に呼び出される。
ケイが幼い頃に家を棄てた父の死は彼女にとって他人事だったが、母・貴子から形見として古いエレキギターを無理矢理押しつけられてしまう。
その帰り道、ケイは死んだ筈の父の後ろ姿を目撃する。
その目撃を契機に、ケイは父と過ごした最後の日に彼が伝えようとした言葉の意味に気付いていく。
ケイの父は嘗ては証券マンとして、家族の為にバリバリ働いていたが、バブル崩壊で人生の歯車が狂う。
それから趣味が高じてエレキギター1本でロックミュージシャンで食べていこうとするが、それ程世の中は甘くなく、根無し草のようになっていく。
自分を棄てた父をケイは嫌ってはいても、恰も遺伝子に従うようにギター片手にミュージシャンもどきをしている。
成人祝いの居酒屋で父との心の距離感が縮められぬまま別れたケイは、記憶を辿る旅の果てに何を見出すのか?
親子とは、生きるとは何かを、本作は最後に問い掛けているような気がする。