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ジョー・ベル ~心の旅~のコマミーのレビュー・感想・評価

ジョー・ベル ~心の旅~(2020年製作の映画)
3.8
【後悔を乗り越える旅路】



こんな男性がいたなんて…こんな"父親"がいたなんて生まれて初めて聞いた。

"カミングアウト"はとても勇気のいる行動であり、環境によってはとてもハードルが高い行動でもある。ハードルというのはやはり周りの"偏見・差別の目"であろう。それによって"壮絶ないじめ"を経験したりした若者や元若者の方も多いのではないか?中には家族にもなかなか受け入れられず、孤独を感じてはいないだろうか?先週観たA24製作の「インスペクション」でも書いた事なのだが、表面上は差別は解消されつつあるものの、裏をまわれば"差別の壁"はまだ厚いのが観て取れるのだ。

本作の主人公である実在した人物"ジョー・ベル"は、そんな差別によった苛烈ないじめによって"息子ジェイデンに先立たれ"、その後失意を乗り越え、"いじめ撲滅"を訴える為に"徒歩でニューヨーク"を目指しながら教会や学校で"演説"をすると言う試みをした人物だ。そしてこの旅自体、ジョー・ベル自身も息子のカミングアウトを"受け入れきれなかった後悔"から始めた事でもあり、後悔や哀しみを乗り越えようとする物語となっている。
ジョーが途中"ゲイリー・シニーズ"演じるジョーと同様我が子に先立たれた"保安官"に、自分と息子の事を話した所は辛すぎて涙が出たが、同時に共感してくれる最良の友が誕生したのだと確信した。ジョーも保安官も、我が子に先立たれるまでは典型的な"ステレオタイプな父親"だったのだが、2人共確かに変わろうとしてくれている所が良かった。
ジョーの"荒々しさ"は観ていて辛かったが、それも含めて旅を通して見つめ直していくのが観てとれた。

"脚本家"の事を調べると、なんとあの名作「ブロークバック・マウンテン」の脚本家コンビではないかと感激な瞬間であった。この脚本家コンビがジョーに目をつけたのは必然だったのかもしれないが、あの名作にも連なる作品になった事は間違いない。
旅路の景色もとても雄大で美しかった。ジョーとジェイデンとの会話も、景色も相まって余計美しく感じる。"マーク・ウォールバーグ"が本当に良い味を出しているし、ジェイデンを演じた"リード・ミラー"は、これから伸びる俳優なのではないかと感じた。

配信スルーはとてももったいない。劇場で観ても遜色ない名作だと思います。
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