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ジョー・ベル ~心の旅~のこつぶライダーのレビュー・感想・評価

ジョー・ベル ~心の旅~(2020年製作の映画)
3.3
ゲイを理由にイジメを受けていた少年ジェイデン。イジメを無くすため父親ジョー・ベルは息子と共にニューヨークを目指してアメリカ横断の旅に出る。

実話を基にした作品。後に『ドリーム・プラン』で脚光を浴びることとなるレイナルド・マーカス・グリーンがメガホンを取った。

冒頭からジョーが息子ジェイデンと荒野を歩いて行くシーンが映る。
オレゴンからニューヨーク、途方もない距離。それを歩いて行くのだから想像もつかない時間と疲労が襲ってくる。

広大な乾いた大地を旅しながら、息子との絆を深め、確執を取り除きながら全米を感動させていく……
のかと思いきや、そうではなかった。

ジェイデン、、、既に亡くなってる!?

度々挿入される回想シーンでは、ジェイデンの苦悩が痛い程に伝わってきた。
片田舎のキリスト教が主の世界、凝り固まった昔ながらの価値観、すべてがジェイデンを苦しめた。
理解者がいなかったわけではなさそうだが、自分には計り知れない痛みを、悩みを、彼は抱えて、遂には自死を選んだのだと…

そのツラさはさらに家族をも蝕む。
ジョーは、彼の死を無駄にせず、想いを伝えようと旅先で語り部となる。
しかし、それはジョー自身の心の解放になっていく。

物凄く悲しいストーリーだった。
これが実話であるというのも、何とも受け入れ難い。
ジョーは、ジェイデンの親としてもっと何か出来たんじゃないか?とか、自分が自死の理由の一因だったのではないか?と考えている。
うん、わかるなー。やり切れないよね。

途中出逢った警察官に胸の内を打ち明けるシーンは、切なく、とにかく切なく、映画としては良いシーンと思えた。

マーク・ウェルバーグはさすがでした。
『テッド』のようなふざけた役どころも良いが、今作みたいなシリアスな作品でも輝けるのね。
彼の中にあった怒りを解放して、寛容になるための旅だった。その辺はもう少し脚色必要だったかとは思う。

ジェイデンを演じたリード・ミラーも悩める思春期少年そのものだった。
父親を愛しているし、心の底では信頼してはいる。でも、父親からはゲイゆえの行動への拒否を感じてしまう。そんな姿に涙が出た。

捻りのある出だしではあったが、ストーリーは予定調和で進んだ。ラストこそ予想していない展開ではあったが、号泣というよりはしんみりした終わり方。これはこれでありだけど、満足度は上がらなかった。

個人的には父親目線で色々て考えるきっかけを与えてくれた作品となりました。
まだうちの息子は小さいけど、こういう映画があって、ジョーとジェイデンの物語が教えてくれたからこそやり切れたってことも出てくるかもしれない。
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