ぶみ

クライマーズ・ハイのぶみのレビュー・感想・評価

クライマーズ・ハイ(2008年製作の映画)
3.5
命を追った、あの夏。

横山秀夫が上梓した同名小説を、原田眞人監督、堤真一主演により映像化したドラマ。
未曽有の大惨事となった飛行機墜落事故を取材する新聞記者等の姿を描く。
原作は未読。
主人公となる北関東新聞社の記者を堤、同新聞社の上司や同僚を堺雅人、尾野真千子、遠藤憲一、田口トモロヲ、堀部圭亮、金子和、マギー、滝藤賢一、皆川猿時、でんでん、矢島健一、樋渡真司、山田明郷、矢柴俊博、中村育二、螢雪次朗等が演じているほか、野波麻帆、西田尚美、小澤征悦、髙嶋政宏、山﨑努といった老若男女問わず、錚々たるメンバーが勢揃い。
物語は、架空の新聞社である北関東新聞社の記者を主人公としているが、原作者自身が元上毛新聞社の記者であり、実際に取材に当たった1985年8月12日の日本航空123便墜落事故を題材としているため、ノンフィクションをベースとしたフィクションとなっていることから、全体的な印象としては半ドキュメンタリーか再現ドラマを見ているかのよう。
ただ、前述のような事故を扱ってはいるものの、その事故そのものよりも、その後、記者がどのように取材をし、記事を書き、様々な取捨選択を瞬時にしなければならない様を臨場感溢れるタッチで描いているため、パニック・スペクタクルではなく、新聞社のお仕事ムービーとして楽しめるものとなっている。
特に、事故が起きた昭和末期である昭和60年当時は、今のようなスマホはもちろん、携帯電話すら一般的には普及しておらず、ポケベルが最先端の機器だった時代であるため、情報をいかにして手に入れるか、またそれを伝えるかの大変さが手に取るように伝わってくる内容となっているとともに、尾野真千子演じる記者が乗るクルマが、当時我が家にあった初代FFモデルとなる8代目トヨタ・コロナの中でも、レアな5ドアモデルであったのには、テンションが上がった次第。
と、同様に、当時はそんなに話題にはなっていなかったものの、500段近くの階段を下りないと駅舎からホームに到達できないことから、今や「日本一のモグラ駅」とも称される、上越線の秘境駅、土合駅が登場していたのも鉄道好きには見逃せないポイント。
加えて、作品自体は2008年公開と、今から15年前であるため、当然のことながら、キャストは全員若いものの、堤は今とは変わらずだし、堺の目力は当時から健在であるし、はたまた滝藤や皆川の怪演はインパクトが残るものとなっているなか、今では、邦画界の名脇役となっているでんでんが、当時から良い意味で今と変わらず老けた風貌であったことや、渋さ満点の小澤の若かりし頃の姿を見ることができるのも、少し前の作品ならでは。
正直、台詞がよく聞き取れなかったり、蛇足だなあと思うシーンがあったり、はたまたフィクションに徹しず、中途半端に実際の事故を題材としていることから、どのような視点で観ればよいのか、わからない部分はあるものの、前述のように、新聞社のお仕事ムービーとしては満足いく出来栄えであるとともに、昭和の煙草臭くてむせかえるような雰囲気を堪能できる一作。

これ、一面トップで。
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