Donatello

クライマーズ・ハイのDonatelloのレビュー・感想・評価

クライマーズ・ハイ(2008年製作の映画)
4.0
毎年JAL123便墜落事故追悼式の報道がある度、なんとなく思い出したように観てしまう本作。

この映画の公開前、「試写会当たったから一緒に行かない?」と言われた時は完全に登山の映画だと思ってましたけどね。

第32回日本アカデミー賞最優秀作品賞は『おくりびと』に阻まれましたが、アレなかったら、これが最優秀賞でもおかしくなかったと思ってますよ今でも。
『容疑者Xの献身』もありましたから、藤沢周平系時代劇ナシで解りやすい良作な現代劇が日本アカデミー賞を席巻した稀な年でしたが。

123便墜落の件を、事故そのものではなく、それに関する記事を書く新聞記者達の視点から描くというストーリーが予想以上にドラマでして。

堺"倍返し"雅人君も、滝沢賢一君も、尾野真千子ちゃんも、遠藤憲一さんも、この映画でそれぞれの演技力を知ったというか、暫く邦画は時代劇しか観なかった僕を引き戻した、割と好きな作品。

事故の凄惨さを露骨には映さないのに、堺雅人君演じる佐山が書いた現場雑感が読まれるシーンは、それでも震えるレベル。

普通のヒューマンドラマに見せかけて、終盤の堤真一さんとエンケンさんのやりとりや、堺君との電話での会話は完全にサスペンスもの。
「なんかおかしくないですか?これ」と電話口で囁く堺君は、もう人ひとり殺めてんじゃないかという迫力で唸ります。

例のセリフじゃないですが「幾何の問題と見せかけて関数の問題」系の良作で、好きな割には未だ原作は読んでないのですけども、多分ヴィジュアル的にも原作に負けてないんじゃないかと思います。読んでないですけど。

百円玉をポケットに入れてジャラジャラ鳴らしながら観ると大変気分が出ますが、煩いのでオススメはしません。
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