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嵐が丘のlarabeeのレビュー・感想・評価

嵐が丘(1988年製作の映画)
3.4
【ほぼ全員脱いでます】

エミリ・ブロンテの『嵐が丘』を鎌倉時代の日本を舞台にアレンジした作品。

村川透とのアクション作で圧倒的な人気と地位を築いた松田優作たが、その後も鈴木清順、森田芳光、深作欣二など大御所や個性派監督とガップリ組んでおり、役者として貪欲な姿勢が窺える。何かを吸収してやろう、と。

そしてここでは吉田喜重。『嵐が丘』を大胆にアレンジしていて、ストーリーというより様式美で魅せる作品に仕上がっている。

鬼丸の狂った様な絹への愛情。死んだ絹の墓まで暴くという狂った愛情。生まれた家や出自に翻弄されながら、愛情や憎悪にまみれて生きていく鬼丸や他の人物たち。

ストーリーで惹きつける作品ではなく、終始暗いトーンで話が進んでいくので、正直優作作品でなかったら観ようとしていなかったかも知れない。

でも映画に賭ける優作の情熱が鬼丸そのものに乗り移っている様でもあり、それだけでも優作ファンとしては見応えを感じる。そしてそれを受ける絹役の田中裕子もさすが大女優。

本作はよく「能の様な様式美を描いている」と評されるが、優作の顔も田中裕子の顔も能面そのもの。そういう映画である。
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