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カラマーゾフの兄弟のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

カラマーゾフの兄弟(1968年製作の映画)
3.0
【3時間あるがRTA並みの疾走感!】
超長尺映画特集配信をするにあたって、10年近く積んでいた『カラマーゾフの兄弟』を観た。言わずと知れたドストエフスキー代表作の映画化である。制作途中でイワン・プイリエフ監督が亡くなり、俳優が引き継いで完成させたことでも有名な作品でもある。『カラマーゾフの兄弟』は昔「まんがで読破」で一通りあらすじを把握しているのだが、あまりピンときていなかったりする。それだけに不安だったのだが、果たしてどうだったのだろうか。

超長尺映画の場合、複数のパートで分かれていると気持ちが楽になる。それでも『ラ・フロール』のように一部のパートが6時間あったり、『死霊魂』のように分割しても一つあたり3時間あると過酷なものとなる。それに比べると『カラマーゾフの兄弟』は1時間くらいのものが3本なので気が楽だったりする。しかしながら、原作特有の多過ぎる登場人物問題は解決するわけではない。しかも、3時間半近い尺はあれども、原作の文量に比べると時間が足りな過ぎる。その結果、ストーリー展開はRTAばりの爆速モードと化し、顔と名前が一致する前にスルリと抜けていってしまうのだ。また、本作は演劇調の大袈裟な演技で進行するので、映画を期待してみると結構辛い。それでも辛抱強く観ていると1.文学特有の名言炸裂2.特殊なアクションに興奮する。1に関しては「この世にブスは存在しない。どんな女性にも魅力があり、それを見つけるのが善き行為だ」「汚いものにも魅力がある」と下品に語りつつも、本質的なところを突く場面がある。2は終盤において、神の存在に関して自問自答する場面で、突然カメラが回転し始めるのだが、サイコパスアニメでありそうなカメラワークとなっていてツボだった。ロシア文学大作だと『戦争と平和』派ではあるが、つまらなかったかと訊かれたら、そうでもないといった作品であった。
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