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Shithouse(原題)のchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

Shithouse(原題)(2020年製作の映画)
3.5
現在開催中のサンダンス映画祭で圧倒的な支持を集める"Cha Cha Real Smooth"で監督・脚本・主演を務めるクーパー・レイフはなんと1997年生まれ!!本作"Shithouse"はそんな彼のデビュー作です。評価が高い上にダコタ・ジョンソンが共演の"Cha Cha...”が今後公開されるのは間違いないと思うので、監督の紹介という意味で本作をレビューします。

中高生の頃のような大人の真似事ではなく、普通の恋愛ができるようになる大学生の過程を親離れと自立を絡めて考察している秀作です。主人公は大学一年生のアレックスで、大学生活が始まり半年が経つにも関わらず全く馴染めていません。マイペースな寮のルームメイトとは話が盛り上がらず、授業も面白くないし、パーティーの雰囲気も楽しめない。ちょっとした違和感が気になってしまい大学に溶け込めない超繊細ボーイの彼は、頻繁に母親に電話を掛ける&ぬいぐるみの犬と心の中で会話する... 「おーい、大丈夫かー」と思わず声を掛けたくなります。

ひょんなことから一つ学年が上で寮の世話係のマギーとぶらぶらおしゃべりしながら一晩過ごすことになります。最初はお母さん的な存在を求めて、そして話をしていくうちに自分と同じように繊細な心を持つ孤独な仲間として彼女に惹かれていきます。要は寂しさの埋め合わせであり彼女自身の魅力に惹かれているわけではない。それって恋なのか?でも気になって仕方ない!というストーリーです。

監督の「自分の知っているものしか描かない」姿勢が徹底されていると思います。主人公も自分を投影した自分と同世代のキャラクターを自身が演じ、出てくる登場人物も家族と大学内の同世代のみ、ロケーションも大学と周辺だけです。今この瞬間も世界の大学のどこかでこんなことが起こっているはず。そんなありふれたセリフやシーンだけで構成されています。リアルを通り越した臨場感がすごい。また観客がスクリーン越しに思わず応援せずにはいられない独特な主人公の描き方も特徴的です。最新作は大学卒業直後のモラトリアム期の青年と自閉症の子供を抱える母親(ダコタ・ジョンソン)の恋愛が描かれているようですが、論評をみるとここら辺の特徴は健在のよう。

少しケチをつけるとすれば監督/主演の彼の演技がちょっと微妙。悲しいときはこの表情、驚いたときはこの表情、みたいな感じでパターン化された5個くらいの表情を使い回している感。今後彼が年齢を重ねて演技を磨いていくのか、それとも映画の高評価を受けて監督業に専念するのか。いずれにしても将来がとても楽しみなお兄さんが出てきました。要チェックです!
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