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劇場短編 仮面ライダーセイバー 不死鳥の剣士と破滅の本のsanbonのレビュー・感想・評価

3.2
2ヶ月以上ぶりに観た映画が「仮面ライダー」でした。

ここ最近鑑賞したラインナップを見ると、アニメに邦画ばかりとだいぶ偏っている事に自分でも驚くが、コロナの影響で洋画はほとんどが延期に次ぐ延期なのだからまあ仕方ないかというのと、なんかこんなご時世に小難しい話観たくねえなという気持ちが強くなっているのもあって、絶対に観に行くと思っていた「TENET」も結局見送ってしまったというのが実情である。

そして、仮面ライダーもコロナ禍での延期の影響を如実に受けた被害者だ。

そもそも、仮面ライダーや「スーパー戦隊」がスケジュールを狂わされるのは超死活問題なのである。

「ニチアサ」の特撮枠は、一年周期で新しい作品に代替わりするのが慣わしとなっているが、約10年前まではライダーも戦隊もそれが同時期に入れ替わっていた。

しかし、そうするとおもちゃの売り上げがライダーと戦隊に分散されてしまう事を憂いた「東映」は「ディケイド」という平成ライダー十周年を祝したお祭り作品を半年で終わらせる事により、それぞれの新番組の切り替え時期を半年間ズラす事に成功し、それ以降戦隊は冬、ライダーは夏に番組が終了するルーティンが確立されたのである。

つまり、せっかくおもちゃを売るために仕組んだ戦略が台無しになってしまう為、商業的な理由から終わる時期が完全に固定されており、いかなる理由があろうとも延期は断固として行われないのだから、何かのトラブルで放送がストップするような事が起きると必然的に話数は削られ、更に年2回公開される劇場版も、TVに先行して新ライダーなどが登場したりする事から、辻褄合わせの為にはこちらも延期など決してあってはいけないのである。

その為、今回コロナ禍で削られた話数はその分テコ入れする他なく、映画の内容や撮影体制も急ピッチで作り直すしかなくなってしまった。

このように、ライダーと戦隊は1年間のタイムスケジュールがガッチガチに決められた中制作されている為、今回のコロナ騒動はかなりの痛手であっただろう。

さて、そんな不遇の状況下で始まった「仮面ライダーセイバー」であるが、これがなんというかコロナうんぬんを抜きに語ったとしても、箸にも棒にもかからないような作品なのである。

まず、展開があまりにも駆け足すぎて、1話から今日に至るまでの全てがダイジェストに感じる程、全く要領を得ないのがいただけない。

そのせいで、ほぼ全ての要素において深掘りが出来ておらず、本当に上澄みの濃い部分だけを要所要所展開していっているだけなので、物語にはメリハリがなく納得感というものがごっそりと抜け落ちてしまっている。

おかげで、主人公である「飛羽真」が「ソードオブロゴス」の一員として認められるきっかけや、ライダーとして強くなっていく過程など、ストーリーを展開するうえで最も重要な要素すらかなりおざなりに無理矢理進行している有様だ。

その上「ゼロワン」で見せたような趣向を凝らしたアクションも鳴りを潜め、やたらとウジャウジャ登場するライダー達はどれも没個性であるし、敵の幹部もやたらといる割にはそれぞれの存在理由も目的もよく分からんまま話が進んでいく。

そんなどうしようもない作品の、初の劇場短編にあたるのが今作であるが、今作も今作で起承転をすっ飛ばしていきなり結から話を始めるという荒ぶりようである。

しかも、敵さんの目的もなんじゃそりゃという感じ。

人類は争いと破壊を繰り返す生き物だから滅ぼしてやるという思想で襲ってくる敵って、ハッキリ言ってそれを達成して自分はどうしたいのか全く理解が出来ない。

ましてや、そうやって否定した人類と同じ破壊活動を用いて根絶やしにしようとするそもそもの魂胆がもう浅はか極まりなく、動機と行動の矛盾がボス敵としての威厳すら欠いてしまっている有様だ。

アクションも暴れてるだけで特筆する点や凝った演出もなにもなく、事態の収束も脈絡のないパワーアップで納得感など微塵もなく行われてしまうし、出演者などとの様々な契約上そんな訳にもいかないのだろうが、こんな突貫工事の作品を作るくらいなら、いっそゼロワン一本でもこちらとしては一向に構わなかった。

だって、二本立てにする事で上映時間は100分近くなる訳で、ちびっ子の集中力なんてそんなに保つわけがないだろう。

おかげで、本命である筈のゼロワンの終盤あたりには、飽きたちびっ子がやたらと耳障りなあの「ポワンッポワンッ」てカウントダウンの音マネを延々としていたよ。

造形的にはカッコいいのにストーリーが何をやりたいのか定まってないまま突っ走ってるとしか思えず、これでは今年のライダーは失敗作のまま終わりそうである。

これなら、次公開されるセイバーの単独作はスルー案件かな。
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