EDDIE

セブンのEDDIEのレビュー・感想・評価

セブン(1995年製作の映画)
4.7
“大食・強欲・怠惰・憤怒・高慢・肉欲・嫉妬”
「七つの大罪」に擬えた猟奇的な連続殺人事件。
真相を追う2人の刑事…翻弄されのめり込んでいく。
世の中の不条理を見事映像化したデヴィッド・フィンチャー監督出世作にして大傑作ミステリーサスペンス。

もうこの作品1年に1回ぐらい観てるかもしれません。
あまりにも残酷・残忍な事件の数々に目を背けたくもなりますが、決して無視してはならないという警告のようなメッセージ性を帯びており、初鑑賞時からずっと脳裏に焼き付いている作品です。
公開当時はまだまだ子供だったので、本作との出会いは少し後で自分が高校生ぐらいだったでしょうか。たぶん地上波放送されたのが最初だったと思います。
絶句でした。衝撃的でずっと頭からこの作品が離れず、自分がデヴィッド・フィンチャーという鬼才にのめり込んだのも本作がきっかけだったかもしれません。

何よりも本作は公開後、多くの支持を得たことはもちろん、フィンチャー監督自身を救うことになった非常に貴重な映画なのです。
多くの方々がご存知の通り、フィンチャー監督は長編デビュー作となった『エイリアン3』で散々な評価を下されてしまい、本人も「もう一本映画を撮るぐらいなら、大腸がんで死んだ方がマシだ」とか発言しているわけです。
ただアンドリュー・ケビン・ウォーカーが数年もの歳月をかけて完成させた本作の脚本を読むうちに、失われかけた情熱が再燃したといいます。

以降はみなさんもご存知の通り、ハリウッドでも超大物に数えられるフィルムメーカーとなりました。

本作の見所は、まずあまりにもおぞましい死体の描写でしょう。犯人の猟奇性が明らかな残酷すぎる手口の数々に、初見では言葉を失うこと必至。
なぜ犯人はこのような恐ろしい殺人を繰り返すのか。それは本作の脚本家であるウォーカー氏が脚本に取り掛かった動機そのものなんですよね。

作中にも出てくるダンテの“神曲”です。
そして、舞台となっているニューヨークの街の人々そのものが動機となっています。

殺人に限らず数々の事件が日夜巻き起こっている大都会。人々は目の前で窃盗が起ころうが、暴力沙汰が起ころうが見て見ぬふり。
本作の中でもモーガン・フリーマン演じるベテラン刑事サマセットが同様の振る舞いをしています。
そこに対極的に登場するのがブラッド・ピット演じる主人公の新米刑事ミルズです。熱血感で感情的、正義感と野心に溢れ、世の中の不条理とも戦う姿勢。
感覚の麻痺してしまった人々と違い、この真っ直ぐさがあまりに未熟ではありつつも、眩しくもあります。

だからこそラストが残酷極まりないのです。だけど、現実から逃げてはいけない。こんな残酷で不条理なことが我々の住む現実世界でも当たり前に行われているのだから…というメッセージを含んでいると思っています。

ミルズの妻トレイシー役にグウィネス・パルトロー。本作におけるある意味キーパーソンでもあり、若かりしペッパー・ポッツはとても見目麗しいです。

衝撃的で記憶にも刻まれる印象的なラストは、実は別案もあったといいますが、脚本家の意図を尊重してそのままの案で進んだといいます。
そのあたりのメッセージも踏まえて考えると、このラスト以外考えられないなという感覚です。

今後も何度も観ることになるであろうお気に入りの一作。サスペンス好きで未鑑賞の方がいるならば、是非とも観ていただきたい作品です。

※2021年自宅鑑賞65本目
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