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セブンのbebeのレビュー・感想・評価

セブン(1995年製作の映画)
4.1
予備知識を要する映画。何も知らずに観てもストーリーが作り込まれているので観れるけれど、ただ観るに堪えるだけの、ただエグい映画になってしまいそう。

七つの大罪「傲慢・嫉妬・憤怒・怠惰・強欲・暴食・色欲」はキリスト教的な考え。
やっぱり、こういうテーマの時にダンテ『神曲』への言及は避けて通れないかなと。
『神曲』三篇のうち、『地獄篇』を抜けた先、『天国篇』へ向かう山登りが『煉獄篇』。煉獄というと、日本の漫画等々では、しばしば「地獄のもっとエグいやつ」という描かれ方をよく見る気がするけれど、全く別の役割。悔悛の余地が認められる者が罪を清めるまでの道中に「七つの大罪」は登場する。じゃあ地獄って何?地獄は「こいつはもう悔い改めることすら出来ねえな」っていう奴らを永久に罰し続けるところ。えぐい。

ところが、本作では人が死にます。というか殺人。
→現世での私的刑罰、いわば死刑・私刑みたいなものは人間の罪ではないのか?
 ーそりゃ罪だろ。
→では「大罪を犯す」のと「罪人を罰する(説教する?)」のではどちらの方が悪?
 ーでも個人の裁量に拠るのは危険だろう
→では組織にはその権利と正当性があるのか?
と、問答に近い施策を巡らせると、妙にゆったりとしたこの映画が、素晴らしい時間配分でできていることに気づく。考える時間は与えてくれるが、結論は掴ませてくれない。そんな感じ。まあその結論というのも、実際は近づいてる気になってるだけで、映画が終わってから何時間考えたって答えなんて出ない哲学問答みたいなものなんだけれど。

冒頭で『カンタベリー物語』も登場。中には刑事の話や免罪符売りの話が含まれる。
ミルトン『失楽園』からの引用「地獄より光へ至る道は長く険しい」。ミルトンというと、同著で「自由と放縦」の区別を説いた人。

と、掘り下げれば色々と出てくるんだけれど、非常にスッキリとまとまった映画。カタルシスの気持ちよさみたいなのはなくって、一貫した残酷さを評価できる人にはお薦めできるし、逆にいわゆる嫌ミスが苦手な人とかはこれも苦手かも。
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