喪われた我が子が齎したのは、悲しみや痛みだけではなく、関係性の破壊だった
残された両親の間には溝が生まれ、てんでにばらばらの方法で、悲しみと絶望と無力感に身を浸している
理不尽に損なわれた生命、不可逆的に変わってしまった日常
受け入れ難い苦痛と人はどう向き合えば良いのだろうか
その問いにこの映画は音楽で応える
King Princessの1950が不意に流れ、「I‘ll keep on waiting for you」とそれは歌う。世界に失われていた色が少しずつ蘇っていき、枯れ果てていただろう涙を取り戻す
そんな描写が連ねられていく
やがて夫婦は互いに悲しみを分かち合う術に気付き、映画はエンドロールに入る
この映画は色を巧みに使う
最も多い色は白と黒
ほとんどがそれ
だからTシャツの青が残酷なほど眩い
星条旗の色はアンビュランスの警告灯の色と不気味に符合する
不思議な暖かみのあるオレンジ色の中で夫婦は互いの存在を思い出す
どれほどの人がこうした事件の中で、色を失い、そして取り戻してゆくステップを踏まねばならなかったのだろうか
失ったままとどまっている人はどれだけ居るのだろうか