空海花

アンコントロールの空海花のレビュー・感想・評価

アンコントロール(2020年製作の映画)
4.0
今年公開作品まだ2本目みたい😟
2本目もデンマーク映画🇩🇰
未体験ゾーン2021公開作をレンタル。


監督・脚本フレデリック・ルイ・ヴィー、アンデルス・ウールホルム。
2020年ヴェネチア国際映画祭国際批評家週間に出品された。
警察と移民。横暴と反発。
2人の警官が移民地区に居る間にその事件は起こった。

原題“Shortaショルタ”はアラビア語で警察のこと。
オープニングで教えてくれる。
イントロでは、耳に当たるような音が後ろで響いていて、不穏な緊張感をもたらした。

デンマーク警察と移民の関係。
「デンマークの息子」が移民側の目線が大きいのに対し、
こちらは警官からの目線。
そういう意味ではラ・ジリの『レ・ミゼラブル』を思い出す。

あちらは衝撃的な展開はあるが、
内容はシンプルでストレートだった。
それに対してこちらはアクションチックであったり、プロットも多い。
だからと言ってごちゃついている訳ではない。
どちらも警官の目を通して、怒りを顕わにした子供や若者が描かれるが、
こちらは少しだけ個々が表れている。
思い返すとあちらは団結した群というシンプルさと強さであったように思う。
移民や他人種を憎む警官は、最近だと『ブルータル・ジャスティス』『ブラックアンドブルー』なども思い出した。
遡れば枚挙に暇がない。悲しいことに。

クライム・アクションと言ってもいい
激しさも見応えがあるが
何より移民地区という袋小路の中で
2人の警官と連行中の少年1人という孤立感とスリル。
どうなるかわからない状況が二転三転していき
その緊張感は終幕まで続く。

社会派ながらも、激しい衝突とスリリングなアクションに重きが置かれていくのかと思うとそれは違った。
この2人の警官の心情もどんどん揺らぎ転じていく。
元は移民への暴挙を働く年上の警官と
日和見主義的な年下の警官。
彼らがいかに行動していくのか─
それこそが見ものである。
ラストがもう…
とにかくずっと気が抜けない。

「スヴァルガルデンは忘れない」
この地区の壁に書かれた言葉が
心にこびりついてしばらく離れなかった。

事が起こる前の、移民地区の景色や
彼らの行く先々の光景も効いている。
劇伴も特徴があって緊迫感を倍増させる。

怒りが憎しみに転じると
連鎖して坩堝と化す。
その隙間に良心はまだあると信じたい。
紡いでいかなければならないのはむしろその隙間なのだから。
先に書いた個々の表現にその余地を見出したがっている自分を、最後に感じた。


2021レビュー#082
2021鑑賞No.129
空海花

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