「バーニング 劇場版」「#生きている」で、すっかりユ・アインの虜に。
という事で彼の主演最新作を劇場で。
本作が長編デビュー作となる、女性監督ホン・ウィジョンがメガホンを取る。
貧しさゆえ、犯罪組織からの下請け仕事である死体処理で生計を立てる口のきけない青年テイン(ユ・アイン)と片足を引きずる相棒のチャンボク。
身代金目的で誘拐された11歳の少女チョヒを、1日だけ預かる事になったが、トラブルが重なり、テインとチョヒの奇妙な共同生活が始まるが、チョヒの親からの身代金は一向に支払われる気配がなく—— 。
公式サイトでも「口のきけない」とあるが、本編で病気によるものとの説明もなく、個人的には「口をきかない」のでは?という解釈をしている。
15kgの増量で難役に挑んだユ・アイン。表情のみの演技にすっかり魅せられる。
誘拐された少女の扱いに困り、チャンボクから家で預かるよう促された時の、思いっきり嫌な顔で首をぶんぶん横に振る仕草。言葉以外で彼の考えを読み解くのは、観客としても楽しい推理ゲームのようなもの。
裏稼業の仕事に手を染めていたのに、小心者。彼の性格が災いして、事態は思わぬ方向に転がっていく。
関わった人間が次々と退場していき、取り残されたテインとチョヒ。そしてテインの幼い妹(この少女、テインとの血縁はない?)。
楽しげな擬似家族のような瞬間が訪れたかと思うと、テインはチョヒを人身売買業者に手放そうとしたり、はたまた隙を見てチョヒが逃げ出したり。
彼らの関係性の儚さ・移ろい易さは、まるで本作で描かれた夕焼け空のよう。
突き抜けるような青空は、束の間のマジックアワーで薄いピンク色に染まり、やがて漆黒の闇に包まれる。
田園風景と空が何せ惚れ惚れする程美しい。
力ある者に虐げられ爪弾きにされた、声なき者達の孤独が絶妙なコメディ要素を含んで描かれる。
ラストは、若干消化不良気味。
言葉を発しないテインの物語なので、キャラクターの心情がぼんやりしてしまうのは致し方ないか。