荻昌弘の映画評論

女の四季の荻昌弘の映画評論のネタバレレビュー・内容・結末

女の四季(1950年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

A級 (これだけは是非)
 「貸間の情」の映画化である。住宅難という戦後的な現象をメスにしてさまざまの人間を解剖した冷静且つ戯画的なリポオト。映画はその人間像のいくつかを見事に形象化した。ここに、シチュエエションによらぬ人間そのものの面白さが珍しくも諷刺と呼べる程度にまで表現されたということは、邦画が丹羽文雄の「風俗」まで手が届くようになった事実のうちの最大の収穫である。
 その点、杉村「嫌がらせ」春子の圧倒的な演技とそこにかけられた演出が絶賛されることは勿論、登場人物すべてを一応はヒネってまわした作者の見識は更に認められてしかるべし。生得の異常感覚がピタリと原作の本質を衝き当てた点に成功の主因あり、と申しては豊田氏に失礼かな?
『映画評論 7(5)』