O次郎

姿なき脅迫/狙われた密室の女のO次郎のレビュー・感想・評価

3.9
小島監督のメタルギアシリーズの元ネタとしても有名な『ニューヨーク1997』や、カルト的人気を誇る『真夜中の処刑ゲーム』『要塞警察』で有名なジョン=カーペンター監督が、その出世作たる『ハロウィン』の同年に撮ったらしい、知る人ぞ知るテレビ映画作品。

少子高齢化が叫ばるようになってから随分と時が経つが、そうした現代の世相の中では、”マンモス団地”は死語に近く、まさしく”マンモス団地”を舞台とした「窃視」の恐怖を描く今作は新鮮であり、尚且つ些細なことが切っ掛けで個人情報が丸裸にされるSNS社会の中に在って身近でもあるはず。
郊外の街からニューヨークへ越したばかりの、テレビ局に勤めるハイミスのキャリアウーマン(死語に死語を重ねてるか...)が、新しい住居である高層マンションの自室を舞台に、正体不明の男からの連日の悪戯電話と謎の贈り物攻勢で心身ともに疲弊していく様を描くサイコスリラー。
往年の名作刑事ドラマの『特捜最前線』でも確か、男女立場逆にした似たような話が有ったかなぁ。

先にマイナス点を挙げておくと、主人公であるローレン=ハットンの描き方。ただただ無力にスクリーミングクィーンと化すのか、それとも毅然と立ち向かうのか、なんとも中途半端なヒロインぶり。そして、こういう作品なのにお色気シーンが無いのがシンプルに残念無念。
一方でカーペンター監督の個性的な演出は光っており、冒頭でいきなり、”犯人”の執拗なお遊びに耐えかねた中年の女性が逃げるように件の高層マンションを去っていくシーンはなんとも薄気味悪い限り。

ラストはそれまで姿を現さなかった犯人が呆気無く姿を現し、これまた呆気無く去っていく。その呆気無さもまたカーペンター監督らしい。
O次郎

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