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ドライブ・マイ・カーのkamakurahのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.0
村上春樹の短編を濱口竜介監督がどう映画化したのだろう。カンヌで脚本賞という冠も気になりいち早く劇場鑑賞。期待を上回る3時間で、原作というよりクレジットの「based on」が相応しい換骨奪胎に感服。村上春樹の短編集の他作も織り込み、ベケットを響かせチェーホフをメタ構造として中核に据えた卓抜な脚本そのものが、まずもって素晴らしい。就中、西島秀俊扮する主人公が取り組む多言語劇の説得力が豊かで、その重層性が物語を堅固なものとして長尺も納得である。モーツァルトとベートーベンの使われ方も実に村上春樹的で(しかもアナログレコード)、長年の愛読者としても膝を叩きたくなる仕上がり。ただ個人的には北海道シークエンスは不要だったと思うが、台詞だけでは多くに享受されないかなと設定について全否定しようとは思わない、あくまで趣味嗜好の視点に過ぎない。そもそも村上春樹の原作タイトルがビートルズの楽曲名であり、重層性を特質とする村上作品のあり様も含めて映画化したのではないかと思わせる濱口監督のスタンスに感心させられる佳品。スタイリッシュな石橋英子の音楽も一興である、と付言しておきたい。

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