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ドライブ・マイ・カーのちはのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
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妻との記憶が刻まれた車。聴けなかった秘密。辿り着く場所。

村上春樹「女のいない男たち」から短編「ドライブマイカー」を映画化。

物語性のある小説を読み終えたような感覚でした。原作とは設定が変えているけど、原作の村上春樹のテイストを残しながら、描かれる人間の多面性、内面性と成長。喪失、後悔、再生、みな何か失ったものを抱えて生きている。美しくも儚い芸術作品。

村上春樹の小説はほとんど完読するほどめちゃくちゃ好きで、映画かなりよかったから思いつくまま書いてみた。傑作、素晴らしかった。

2021年邦画三本指に入る、めちゃくちゃよかった。179分ほぼ3時間と時間だけ見れば長いんだが、これっぽっちも退屈、窮屈に感じない。半分以上が車の中で繰り広げられる会話劇。特別に感動できる場面があるわけではないが、出てくる広島、瀬戸内の景色がとても美しく脚本もとてもいい。

好きなシーン、家福(西島秀俊)とドライバーみさき(三浦透子)2人が運転中にタバコを吸うシーンがあって、火のついたタバコの灰を窓から払うのかと思いきや、サンルーフを開けて夜の道路で2人して手を伸ばして火のついたタバコを突き出すところが、個人的に一番のハイライトシーンだった。
 
「やれやれ…」のセリフ自体は…登場しなかったが、個人的に思わせるシーンは感じたので、やれやれと1人で心の底でつぶやいた。

あと戯曲のお稽古シーンも多く、「ワーニャ祖父」を読んでみたい。戯曲の舞台稽古の中で手話する脇役の女性がいるんだけど、手話だけの演技がかなり印象に残る。

車は詳しくないし興味はないんだが…80年代ちょっと古めの赤い車は、高速道路を走っているひきめのシーンを眺めると、チョロQがは知っている感じで可愛い。調べるとサーブ900?らしい。

ノルウェイの森、バーニング と映画化されてきたが、村上春樹が苦手な人でも映像を、景色を、戯曲を楽しめることができのではないかなぁ。

ロケ地が広島、車ある人は景色が良い場所にドライブ行きたくなるだろうな〜。朝も夜も広島の瀬戸内は美しい。

メイン人物西島秀俊、三浦透子、岡田将生とかなり配役もよかったです。なんといっても三浦透子の無口で感情を表さないドライバー三浦透子はほんとにピッタリハマってた。好きな女優さんの1人になりました。

圧巻の179分。
生きてる限り失ってしまうことはある、それを後悔のないように生きることを教えてもらった。
小説もう一回読み返そう。

#ドライブマイカー
#村上春樹
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