原作ありの映画化は、比較することによってその”差異”に意識が行ってしまい、それぞれの作品の良さを見失ってしまうから、基本的にはまったく別物として観るようにしている。
本作についても原作は読んでいたが、実際モチーフにしているだけで全然違う作品であり、
その上でこの映画は、静謐の中に横たわる人々の心の内に秘める激情が痛いほど伝わってきて胸が苦しくなる映画だった。
劇中劇としての”ワーニャ伯父さん“も「諦めましょう、運命だから」とソーニャに諭されるワーニャの姿こそ、
相手を”理解する努力”を諦めるのではなく、自分の考えで相手の心を咀嚼して自分なりに変換するのではなく、”ありのままを受け止める”という意味での諦めの隠喩なのだと受け止めた。
また、邦画だと悲しい出来事に遭遇した人物を描くのに、やたら泣き喚いたり大騒ぎするものが多い中で、ぶっきらぼうで無表情なドライバー役の三浦透子の存在がとてもいい意味でこの作品を大人な映画にとどめてくれている。
