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ドライブ・マイ・カーのNのネタバレレビュー・内容・結末

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

丁寧。寝ても覚めてもの時もそうだったけど、とっても丁寧な描き方をする監督だな。

家福と音の関係性をたっぷりと見せつけられるオープニング。以降3時間、突き放されることなくずっと没入感の得られる映画体験だった。
闇の部分を見出そうとする家福にみさきが言う、「そういう人だと思えませんか」という言葉、とっても残酷で優しい。
nobadyの評論に、この言葉がファリックからの解放という旨の文章があったのですが、台詞を聞いた時になんとなくハッとしたのはそういう意味もあったのかと。

前半のホラーテイストな緊張感のある物語とは打って変わる、対象の闇や謎ではなく許しと先を見出す物語というのも、観ていて心地よかった。
全編に渡って語られる、音の口から発せられた空き巣魔の話。得体の知れない恐怖を感じる物語。
あれ、個人的には音と重ね合わせて語られているのかなと思った。なんなら、家福に気づいてほしい、咎めてほしい、なぜ知らないフリをするの。そういう感情を込めた、もしかしたら無意識の創作物ではなく、音の自覚がある物語なのかも。
だからこそ続きを高槻の口から、あの暗い車内の中で、あの表情で語られた時すごく怖かった。先を聞きたいのに聞きたくない感じ。
あれを聞いた時の家福の後悔って計り知れない。

君の鳥はうたえると同じ撮影の人らしく、映像全体的に好きな感じでしたが、特に鏡の使い方がすごくうまかった。バックミラーや家の鏡、オーディション会場の全面貼りの鏡など、違う角度の人物や表情をを一つの枠に入れるの手段として良いショットが多かった。
セックスシーンで家福からの切り返しの音の表情と映し方も。怖かったね〜あれ。

死んでもなおつきまとう音の声と、ワーニャ伯父さんのセリフに置き換えられて発される責め立てられるような言葉。居ないのにも関わらず一方的な会話が成立してしまう。
自分の罪や後悔から解放されるための終盤はとても綺麗だったし、少々蛇足的にも思えたラストも、園子温がヒミズを撮影する際、東日本大震災踏まえ脚本を書き直したように、創作者として今のコロナの背景を取り入れ先を映し出すということは必然性もあったのでは。
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