村上春樹の原作小説の映画化は、企画自体もうないだろうなと諦めていたし、それでいいと思っていた。
まさか短編の要素を抽出+肉付けして長編をつくるとは…。
厳密にいうと縦糸が村上春樹で横糸がチェーホフか。なんて緊張感のある編み目だろう。
異色な雰囲気を漂わせるファーストカットから、もう完全に前のめりで見てしまった。
まったくもって現実的ではない、すべてが非現実のここではないどこかの話に見える。
画面の中で大きくなったり小さくなったりしながら、くねくね走る赤いそれを見ているだけで、心地よさと憂鬱さが伴う、からだも頭も映画に溶けこむような没入感。こんな映像体験はなかなかない。
あらためて感想を要点で。
・現実を見ようとしなかった家福が目の病を患い、物理的にも死角ができてしまうという皮肉には心底感心してしまった。
・暴力シーンがない映画で、重要なアイコンとして使われるタバコを久しぶりに見た。嫌煙家なので嫌な気持ちになると思ったけど意外にアリだった。
・音に関しては、はらたいらさんに3000点ぐらいの気持ち←わからない人は無視してください。褒めてます。エンジン音だけ一生聴いていたい。
・コミュニケーションは他者の介入によって成り立つこと、それには言語が必要条件ではないこと。
中盤までは5.0をつけたかった…のだけれど後半どうしても蛇足に思えるくだりがあり、あと観客への優しさが裏目に出てる台詞とか…なので、この点数で落ちつきました。
そういえば、当初岡田将生が演じた役は東出氏だったらしく、いやいやここに落ちついて本当によかった。。