さく

ドライブ・マイ・カーのさくのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.0
いつも通り原作未読おじさん。Kindleには入ってるのでいずれ読みます!(こればっか) 意外と(?)村上春樹は好きでして、そこそこ読んでます。約3時間の長尺なので腰がひけて観に行くのが遅れましたが、何とかタイミングが合ったので鑑賞。糖尿で頻尿の私はおしっこを我慢できる自信がありませんでしたが、案の定、途中でトイレタイムを入れました。自信が確信に変わりました。

以下、ネタバレ含みます。

村春樹さん去年末頃に『ダンス・ダンス・ダンス』を読みましたが、五反田くんと本作の高槻(岡田将生)は似たようなキャラです(多分)。まぁ、良くも悪くも同じような話ばかりですからね村上春樹は。ファンもそれが良くて読んでいるんだろうし(多分)。

ひたすら台詞台詞…なのですが、「何でも台詞で説明すんな!」系ではなくて、感情の起伏も抑えられ淡々と進みます。役者さんは台詞覚えるの大変そう。

ドラマが無いかと言えば、重要な人物の死や、過去の悲惨なエピソードの発露などあるのですが、これも「やたら感情的に騒いで泣く」というチープな演出に陥ることなく、淡々と起こった事実を受け止め、飲み込みながら物語は進みます。

物語は進みます、みたいな話ばかりになってますが、村上春樹を読んでいるときの感覚って正にこれで、特段ドラマチックな展開があるわけでもなく、基本的に淡々と進んで気がつくと何故かその世界観に引き込まれている…この映画もそれに近い感覚が味わえました。

『ドライブ・マイ・カー』という題名通りに車が重要な役割を果たしているわけですが、村上春樹と言えば車ですね。とりあえず車に乗って音楽テープをかける。必ず女が一緒にいる。そしてセックスをする。島耕作かよ、ってくらいしますね。

私は車に興味がなく(ペーパードライバー)当然知識も無いのですけど、「赤くて昭和っぽいルックでかわいい!」とか見てました。渡利みさき(三浦透子)との相性も抜群です。家福(西島秀俊)が、音(霧島れいか)に、「お前のことは大好きだけど一つだけ我慢できないことがある…車の運転だ」からの、車の運転が得意のみさきとの出会いという展開はベタかもしれないですが私は好きです。

家福はみさきに「車の中でタバコはダメ」と言っていたのに、お互いが心を許した象徴として、二人で車の中でタバコを吸う…だけどタバコは車の外に出すことで、まだ全てが解消したわけではないことを現している。このご時世、映画でタバコを使った演出というのも少なくなってきました(むしろ無いに等しい)が、これはうまい演出だと思います。

村上春樹原作なので、最後にはどうせみさきとも島耕作みたいにセックスして、散々広げまくった風呂敷をそのままヤマト運輸の着払いで送りつけてくるみたいなラスト(どんなだよ)になるかと思って見ていましたが、結構しっかり物語を畳んでいました。この辺りは原作はどうなっているのか後で読み比べしてみたいポイントです。

と、重要なのにうっかり書くのを忘れてしまいそうになりましたが、西島秀俊さんは名演です。素晴らしい役者ですね。大好き。私が監督なら絶対オファーする。

最後に余談ですが、本作ビートルズの曲の権利が得られず未使用とのことですが、別にそれで問題なかったのでは? 正直、エンドロールで「ベビユクンドラブマイカー♪」とかノリノリでやられても、「何かこれは違う…」としかならなかったと思う。
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