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ドライブ・マイ・カーのOscarGrooveのネタバレレビュー・内容・結末

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

愛の形はそれぞれ。思想じみたものなので自己愛由来のエゴがあって、しかも行為以外の示し合わせ以外での証明が難しく、痛みを伴うことというのは自明なもの。でも痛みを伴うこともまた愛ゆえなのかも。
耐え難い痛みを残して先立ってしまった妻に、答え合わせのできないまま生きることを強いられた主人公、演出家の家福悠介。元は俳優だったが演劇を通して過去と向き合うことをきらい、2年後は演出家として軸を移していた。そうした中で出会った無口でストイックなひとりの女性ドライバーと心を通わせる。
村上春樹が原作という以外なにも下調べせずにみたんだけど、監督は「寝ても覚めても」の濱口竜介さんだったのを序盤の不穏さに特有なものを感じた。個人的にはトラウマに近いので。
主人公の演出する舞台はアーティスティックなもので、様々な人種や異なる言語の俳優で字幕をつけて有名な戯曲を演ずるというもの。中には韓国手話の女性も。このひとのシーンは全部最高でした。
全体を通したテーマは「分かり得ないこと」というものだとわたしは感じた。分かり得ないことをどう受け止めたらいいのだろうか。これの追求が冒頭のポエムという訳で。文学的な表現が映像になっていることも、いわばすべての地盤はチグハグなのに、一貫した線がひとつあった。か細く弱い線ではあるけど、間接的にでも感じられると思う。
そしてそれらが車で繰り広げられていたこと。車はひとつの外界であり、また進むことを目的にしたものだ。どうやら立ち止まっているより、安息はそこにしかないらしい。
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