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ドライブ・マイ・カーのmoonのネタバレレビュー・内容・結末

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

アカデミー賞!日本の作品で初の「作品賞」へのノミネートは快挙‼️

という事で、今まで観られなかった地方の映画館で急遽 記念上映される事になった。前から気になっていたので、早速 出掛けた。一日一回のみの上映だからか、もう20分前にロビーに人がいっぱい!こんなに賑やかな(でも、静か)ロビー見たの 何時ぶりだろう…コロナ以降、だだっ広いロビーに2~3人くらいしか居なかった時ばかりだった映画館…
以前の賑わいには程遠いけど、それでも、観たい映画には人々は集うんだ…嬉しい。

座席 8割くらい埋まってた。アカデミー賞効果凄い!




見終わって、どう捉えたら良いか 分からなくて、フィルマレビュー チラッと覗いてみると、凄い絶賛の嵐!嵐!
そうか…皆さん 解ったんだね…凄い。
私、レビュー出来ないな…

いや、感じるとこは有った。色々と…
でも…絶賛は…うーん…

ともかく、私なりに感じた事を書いてみよう。見識無さすぎで 恥ずかしいけど。😓
自分の記録用で書いてみよう。せっかく観たからには…。


どうか …読んでもスルーしてください。💦









ラストシーン 何なん!?
その前のシーンまで すっごく没入感有って…見入ってたのに…

どうして⁉️いきなり ミサキは韓国のスーパーで買い物してるの? マスク姿だから数年後?の現在? しかも、韓国語かなり流暢?!だよー? で、家福の愛車に一人で乗ってる!あの犬って、ユンさんとこの犬?! どういう事? もしかして、家福が韓国に仕事で来ていて、買い物頼まれた設定??
でも…あれ?ミサキの頬の傷 治ってる!…表情 明るい!
あれほど、家福が大切にしてる車に犬を乗せてるって…?何が、どうなったの?


最後 家福かユンスが出て来るかと思ってたのに…赤い車が気持ち良さそうに疾走して…
終わり。

この謎のシーンが、その前までのシーンの深い余韻を、一瞬に私の中で吹っ飛ばしてしまった!え〜!? どういう意味??


思い返すと…ユンスは最初から ミサキの事を家福に「素晴らしいドライバー」だと凄く勧めていて、その後、何回も「彼女の運転いかがです?」と尋ねていた。なんだか、引っかかった。ユンスの家に招待された時、ミサキがユンスの飼い犬とすぐジャレ合ったのは、前から来ていたという事か…
ミサキの故郷は北海道だったけど、もしかして、彼女の母は韓国人?ミサキは二世?!だったという事なの⁉️だから、ユンスと知り合い、ユンスは同胞の彼女を助けていたのか? だとしても、ラストシーンの意味が解らない。けど…
考えられるのは…娘と同じ歳のミサキと 共に自身の本音と向き合えた事で、家福は彼女を娘のように思い、彼女が大好きだという愛車を譲り、韓国で傷を治させ、彼女は韓国で新しい人生を送っている…という事を映像のみで 説明?しているのだろうか?
そんな 解釈で良いのか??


ミサキが運転上手いという設定で、サーブが疾走するシーンが幾つか流れたけれど…
ブレーキランプが遅かったり、角を曲がったり駐車したり、車線変更や発車するシーン…ちょっと、スピード早過ぎない?あれだと後部座席揺れる。なんだか 設定にあまりリアリティを感じなかった…な。


などと、書いていた時、本屋の店頭に村上春樹さんの原作(女のいない男たち)を見つけ、ラストの意味が解るかも!と即買いしてすぐ車の中で読んだ。 (51ページの短編)


驚いた‼️


濱口監督…って、凄い‼️大江崇充さんも!
ヤバいって言葉がピッタリ来る…
そりゃ、脚色賞 当然かな…と!

この映画は原作の登場人物の名や立場、エピソードの一部を借りてはいても、原作の何倍も…大きく膨らませた内容になっている事が…分かった。

映画の冒頭からして 非常に文学的なイントロダクション…さすが村上春樹!だと思ったら…あれはオリジナル。[追記…「シェエラザード」の一部を用いている]
原作は東京のみが舞台。広島も、芸術祭の演劇も無い‼️❓
多言語の舞台演出も全くのオリジナル‼️この舞台演出、凄いな…って、さすが村上春樹!考える事が違うと思って観てたから…本当に驚いた。でも…よ〜く考えると、あの演出場面は映像でしか表せられないな…と思う。文章だと多言語も表現しづらいし、理解させるのも難しいかもしれない。もし、これが濱口監督のアイデアなら…本当に素晴らしい発想力だと思う‼️このような多言語の舞台って、もし実際に有るなら観てみたい‼️と思った。


高槻も音の浮気相手の俳優という点は同じだが、映画のような 暴力的な気性でもなく、殺人事件も起こさない。年齢も40歳くらい。しかも、家福は”友人”のような存在と言っている。

音は脚本家でなく、女優のまま、癌で亡くなる。夢の「山賀」の話も全くのオリジナル‼️えぇー〜!!!?そうだったの?
[追記…山賀のストーリーのヒントは「シェエラザード」の中から_であるが、結末は映画独自]

そして、何より驚いたのが、韓国人夫婦のユンスとユナが、全くのオリジナル人物!!正直、この映画の登場人物の中で、私が一番魅力を感じたのはユナ!だったから‼️ユンスの雰囲気も印象的で…この二人から…不思議なオーラを感じた。なのに!このフィルマのサイトの映画キャスト欄に 彼らの記述が無い⁉️かなり重要人物だと思うけど、何故⁉️

ミサキが北海道出身なのは同じだが、原作のミサキはかなりお喋りだ。父のような年齢の家福に対して意見したり、立ち入った事まで聞く。母を見殺しにした…設定も無い。そのような匂わせも無い。母は交通事故死。
だから 北海道にも行かない!

当然ながら?映画のラストシーンも無い‼️ このラストの解釈は…?のままだ。

そして、愛車サーブは「赤」ではない。「黄」色だった!


もう、本当に、原作からの この映画への発想の想像と創造力には 全く驚かされる!


そうこう書いてたら…もう、レンタルが始まってもう一度 鑑賞してみた。
一度目より、興味深く観れた。
内容も 少し 解った気がした…。

家福は妻の浮気を 高槻以前に何人か知っていたのだ…けれど、家で目撃したのは初めてだったのかもしれない…。そのため、冷静さを失い、かけてあった鍵を閉め忘れたまま、出掛けた。外国から帰り、平静を装い妻を抱くが、妻は…分かっていた、家福が妻の浮気を知った事を。山賀の話のオチを高槻から聞かされて…家福は妻が自分に「私は浮気をした」と真正面から向き合おうとしていた事を確信する。けれど、家福には、それが怖くて、今までの二人に戻れないのが怖くて…向き合う事を躊躇した為に…結果、音を失ってしまう。

「真実を知るのは怖くない。本当に怖いのは知らないでいる事、…」

ワーニャ伯父さん」のセリフが、実は家福の心情を語ったり、彼に語りかけている…のだ!と2度目で気付く。凄い…脚本。

高槻が車の中で、家福に音の事、夢のオチを語るシーン。岡田将生さんの真摯な眼差しと涙が込み上げて来る様が素晴らしく圧倒された!彼の語る事が家福の胸をえぐり、深層を掻き乱す。観てる側は…そうだな…と納得できる。

でも…、彼が殺人を犯す必要性 有るかな? ワーニャ役が居なくなる(家福が演じる事になる)必然性の為の退場なら…ただの傷害事件でも良かったんじゃ?


家福の演出方法も、感情を入れない本読みのシーンも、深い意味が有るのだろう…でも、私には まだ解らない。が、魅力的であり、興味深く観れた。

そして、前に書いた通り、私が一番注目したのは、ユンスとユナの存在。
二人の韓国人俳優が とても印象的。原作に無い この二人を敢えて登場させた意味は何だろう? ユンスが、懐が深い人柄と思えるのが良い。

とにかく、ユナの手話(顔も)が とても美しかった!!優美!彼女の手の動きが 本当に滑らかで表情も素敵で、見とれてしまった…韓国式の手話だろうが、「パッ」と口に手を当て 息を吐く?仕草が可愛らしい。どんな意味?もう一度よく見たら解るかな?

ラストの舞台シーンが、本当にその舞台を観ている錯覚に陥るくらい素晴らしかった!!
彼女が家福の肩に寄り添って手で語りかける。音も無く、スポットライトの中 、ひたすら彼女が手話をする。本当にこんなに手話が美しいなんて‼️知らなかった…

ワーニャ(家福)
「なんて辛いんだろう」

ソーニャ(ユナ)
「仕方がないの」
「生きていく他ないの」
「ワーニャ伯父さん生きて行きましょう」
「運命が与える試練にもじっと耐えて
…他の人の為に働きましょう。
そして最期の時がきたら
大人しく死んでゆきましょう
そして、あの世で申し上げるの

あたし達は 苦しみましたって
泣きましたって
辛かったって

そしたら神様は
あたし達を 憐れんでくれるわ


このシーン…好きだ!感動した…何度でも観たい!ここで終わっても良かった…

けど…ミサキのその後も描かねば…なんだね。



キャスティングが素晴らしい。
それぞれの俳優達の個性が立っていて 見応え有った。音役の 霧島れいかさんの口調やトーンがやや 棒読みなのが、音という謎めいた妖しい魅力のキャラクターにピッタリだった。西島さんの誠実で優しい雰囲気も、家福に合っていた。
岡田将生さんは 原作にない 危ない雰囲気を持つ高槻を熱演していた。若手でこの役を得たのは幸運だったと思うが、監督が相応しい役者を選んだと思った。
他に、広島の演劇祭事務局の女性も、オーディションに来た役者達も、それぞれ個性的で、良かった。ユンス、ユナは前述の通り。

そして、新人?初めて見る三浦透子さん。
語らずして、全てを悟っている…人の心の真実を知っている…過去を背負って生きているミサキという役がしっくりと来る…存在感だった。
彼女も良い作品に出会えて良かったね!今 朝ドラに出ていてビックリ!この先の活躍を見守りたい。



ミサキと家福が、それぞれの心の傷を自ら見つめ直し、さらけ出すことによって新たな人生を歩んで行く姿を 深く 静かに描いた作品。

作品として好きか?は分からない。
でも…、大小は有れど、家福のような「関係が壊れる」事を恐れた為に、却って辛い結果を招いた…という経験がある人は多いのではないだろうか…。もし、経験が無いならば、この映画は そうならない為に、ヒントを与えてくれるような気がする。


もう一度観たい。
新たな発見が有りそうだ。


やっと☆付けられた。



※この映画は元々 韓国を舞台にと計画されてたようだ。だから…韓国人俳優達が既に契約を交わしていた為に…日本に来てもらって、あの役となったのかもしれない…※
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