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ドライブ・マイ・カーのandesのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
3.6
非常に静的な映画のようで、構造的には凝っている。戯曲の台詞がモノローグの様に心情を説明するし、第4の壁と対峙するショットも多く、映画自体「演劇」を強く意識させる。つまり、作中の「不自然は台詞回し」は構造によって肯定される。戯曲以外の部分=日常も人々は「演技」しているのである(彼ら全員が人生という劇の登場人物なのだ)。そうなると、映画の中で数少ない「自然な演技」をするシーンが重要な意味を持ってくる。

自動車と運転が非常にわかりやすい比喩として提示される。主人公にとって「自動車を運転する」ことは「人生を生きる」ことである。なので、「緑内障」や「妻の運転」がキーポイントであり、「誰を乗せるか」=「誰が自分のテリトリーに入ってくるか」ということでもある。そんな、「運転=人生」男が、実生活でも「運転を生業にしている」女と出会う。必然である。ちなみに作中、重要なキャラは皆、運転をしているのもヒントとなる⇒主人公、妻、女運転手、スキャンダル役者、韓国人の通訳。

戯曲に精通していれば、より「分かる」部分も多いのだろう。この辺が海外で評価された一因であると思う。

「喪失」「家族」「コミュニケーション不全」「再生」などのテーマや長尺ロードムービーというスタイルから、青山真治の「ユリイカ」(2000)が想起される。音楽に両作ともジム・オルークが参加している共通点もある。
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