『偶然と想像』以来濱口竜介監督に注目していた。
本作がアカデミー賞候補になり更に興味が深まった。
原作の村上春樹は特に好きな作家ではないが
それでも2回読んだ。よくできた小説だと感じた。
濱口作品はまだDVDが少なく
『寝ても覚めても』しか観ていなかった。
そうこうしているうちにツタヤで本作の
先行レンタルが始まり満を持して借りに行った。
レンタル中を心配したがそれほどではなかった。
皆同じ気持ちでいるわけではない。
原作で印象深く、注目していた箇所が2つあった。
一つは首都高で大型トレーラーが隣を並走するシーン。
人生の浮き沈み、ままならぬ様の隠喩に思えた。
もう一つはみさきの発した何気ない一言
「奥さんはその人に、心なんて惹かれて
いなかったんじゃないですか。だから寝たんです」
世界がぱっと開ける感覚があった。
映画ではどう描かれるのかと思ったが
結局この2箇所はなかった。
原作と違う点はたくさんあり、工夫の後を感じた。
車で北海道へ行く経緯と
ラストの韓国は特に枠外だった。
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「最期の時がきたら 大人しく死んでゆきましょう」
「そしてあの世で申し上げるの
あたしたちは苦しみましたって 泣きましたって
つらかったって」
「そうしたら神様はあたしたちを憐れんでくれるわ」
「そして伯父さんとあたしは 明るくて すばらしい
夢のような生活を目にするの」
「そうしてようやくあたしたち ほっとひと息つくの」