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ドライブ・マイ・カーのsheepmanのネタバレレビュー・内容・結末

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

村上春樹の原作「ドライブ・マイ・カー」の枠組みだけでなく、同小説が収められている短編集『女のいない男たち』から「シェエラザード」「木野」という2つの作品の要素を借用している。それに加えて、チェーホフの戯曲『ワーニャ伯父さん』を演じることがこの映画のキモになっている。戯曲や演劇に対する知識がもっと自分の中にあればより深い理解へと結びついたんだろうな……。
傷つくべき時に傷つくことから逃げてしまった家福(原作小説では「木野」の核心に当たる部分である)がそのことに気づき、堰を切ったようにそれまでの感情をあらわにするラストの長回しのシーンに完全に心を持って行かれてしまった。
そんな家福と反対にまだ若く、自分の感情を制御できない存在として登場する高槻が口にする、これまた長回しのセリフも印象的だ。「他人の心をそっくり覗き込むことはできない。僕らがやらなくちゃならないのは、自分の心と上手に正直に折り合いをつけることだ」。作中では高槻が家福の妻である音と寝ていたことは明言されないのだが、高槻が音の語る物語の結末を知っていることでそれが示唆され、はっきりする。
渡利みさき役の三浦透子がすごく良かった。家福の投げたライターを受け取る仕草のカッコ良さ。今年のベスト喫煙シーンに挙げたい。
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