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ドライブ・マイ・カーのtakerattaのネタバレレビュー・内容・結末

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

PG12指定。

原作を、読んでしまっていたので、映像作品化になった方を後から鑑賞。

感想だけ。

愛する者を失った事のある者にしか分からない喪失感や命の重みを、簡単な言葉で現すことの出来ない年月や想い出を、生きると死ぬの間に、お弔いをして、生死を分かつ。

大凡世界4大宗教どこにおいてもそれは等しいかと思う。ただ召された人の生きた証は、人の心や、ふとした温もりの思い出に、生き遺った者たちの心の記憶の端々にあるもので、年月の経過という残酷なまでに過去から未来に一方向だけにしか進まない、巻き戻せない一回帰性の人生というベクトルの中で、人は今を偽らず必死に生きている。

必死でなくても己の心を壊したり感情を押し殺したり、言いたい事も言わずに、現状維持で、だらだらと生きる人もいるかも知れない。
それを人はとやかくは言えない。

惜しみなく愛は奪うという書物もあったが
今回の作品に重装低音のように、低く響き渡り、揺るぎなく全ての人を包むものは、
神と悪魔が闘っていて、その戦場こそは、人間の心なのだ、という劇作家の想いを、汲み取れた者が、ト書きの劇脚本に、textに呼ばれ、そこから相互作用の己を投影した、泥臭く人間らしい、
表も裏も有り有りな、愚鈍さに出逢い、相互作用が舞台に生まれる。

この難しい劇を多言語で成立させようとする、演出を頼まれる男には、その勇気が無くなっていた。
奇しくも、同じ人を愛した若者をその役に据え、
己を投影しようとするも、結束が出来ず、悲劇に終わりそうになり、

自分探しではなく、ここではない落ち着けるどこかを目指し、宛等無い、ロードムービーが始まる。

アメリカ映画でヴィンセントギャロが誘拐した若い女を人質に、車で逃走してゆく、正解なんてまるでないロードムービーの、バッファロー66 の対極を彷彿させるような、

精細で空気感や、間合いを大切に描いた映像は、それが意図する事柄が何の回想と、次のどの布石になるか?読めないと、つまらない映画という感想になるだろうと思う。

文豪 村上春樹の作品ならではという、すごさはあり、それを知らずとも続きを見たくなる人の欲を、私は私の中に、かつて妻や子を亡くした失望感や絶望や、喪失感を埋めるようにみてしまった。

私がそうなった、生き残ったピエロになったのは、若過ぎた10代。
その当時にこの映像作品を観ても、多分何にも分からなかったろう。

大学を出て、奨学金を即返し終え、さてそろそろ自分の人生と思う今に、母校の先輩の文学作品として、映像化された映画を観て、思わず人間って、生きてる時が後悔ないことこそ、大切と再確認し、少し自罰的な気持ちにもなった。

泣いても過去は悔い返せない。
だから、涙が溢れぬよう、夜空を見上げて、
胸一杯に深呼吸をする。

夜中のNYの気温は9℃位
肌寒い、湿度無い分、風は冷たい。
かじかみそうな車椅子のホイールを、
指先だけ出ている、サイクリスト用の手のひら分厚いグローブを嵌めて、少しずつ前に進んでゆこう。

この世に君の代わりを埋める代役なんて何処にも居ないんだよ!

喪失感に押し潰されそうな人間は、生きたまま再び再生して這い上がれるのか?

お勧めします!

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監督 濱口竜介 (2021-08)
原作 村上春樹
脚本 濱口竜介 大江祟允

第74回 カンヌ国際映画祭
: 脚本賞(日本人、日本映画での受賞は同映画祭史 上初),
: 国際映画批評家連盟賞(FIPRESCI賞)  
: AFCAE賞
: エキュメニカル審査員賞 の4冠達成
第31回ゴッサム・インディペンデント・フィルム・アワード:最優秀国際映画賞
第87回ニューヨーク映画批評家協会賞:作品賞
第42回ボストン映画批評家協会賞:作品賞、監督督賞、主演男優賞、脚本賞
LA映画批評家協会賞:作品賞、脚本賞
第56回全米批評家協会賞:作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞
第79回ゴールデングローブ賞:非英語映画賞(日本映画としては62年ぶり)
米国 第94回アカデミー賞 : 日本映画史上初
: 作品賞
: 脚本賞
: 監督賞
: 国際長編映画賞 4部門ノミネート
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