いつか観ようと思ってた本作をようやく鑑賞。
昨年のアカデミー賞受賞で話題になった村上春樹原作の映画化作品。
ロードムービー的な側面もあるが、爽快感はほぼ無く、みさきの運転のように終始淡々と物語は進む。この無表情さや無音がこの作品の大きな特徴と感じたし、現実感があるようでない浮遊感のある独特の印象を残している。
映画全編にわたって繰り返される妻音の朗読テープ、演劇の抑揚のない読み合わせが劇のセリフを一言一句浮立たせるし、それだけ重要な意味を劇中でも持たせてる。
そしてそんなセリフをラストに手話で持ってきて無音にする演出が最高の演出だと感じた。ラストの手話での演劇シーンは言葉よりも深く響いてきて本当に素晴らしかった。
西島さんの影のある演技も素晴らしかったし、三浦透子演じるみさきを通じて徐々に心を開いていく過程もじんわりと心に沁みた。
あと岡田将生演じる高槻も、家福に何かを気づかせるフックとしてうまく機能してたし、何より車中での岡田将生の演技がとにかく素晴らしかった。本作のベストアクトではないだろうか。
三時間という長編で正直万人ウケするとも思えないが、観終わって印象に残るシーンやセリフも多く印象に残る作品。