このレビューはネタバレを含みます
そもそもの物語の内容が言語や手話を跨いだ演劇に携わる演出家が主人公という時点で村上春樹節が炸裂している。
原作を読んだのは遥か昔のことで映画にできるようなストーリーだったかな、と思いながら見始めた。
村上氏の諸作品は常に淡々と無機質なようで時折人間味のある感情を見せる登場人物たちが描かれているところに惹かれているのだが、この作品もまた例外ではない。
演出家の男と専属ドライバー、両者は感情が表立ってみられないタイプの人間であったが、終盤になりお互いのバックグラウンドを知るとダムが決壊したかのように自らの感情を吐露する。
淡々とした人々、淡々とした物語。
それでも飽きずに見れたのはロードムービーのような景観の変化と一見ドライに見える彼らの感情の変化が絶妙に描かれているからだろうかと感じた。
また原作を読み返してみようと思った。