結局カレー

ドライブ・マイ・カーの結局カレーのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
3.0
向き合うことから逃げてしまった男の話。愛している妻は他の男とも時間を過ごしていて自分にはそれがショッキングだったけれど、妻を愛しているのは変わらないし何かが変化してしまうことの方がずっと怖い。だから目を逸らしてここまできてしまった。ちょっと前まではこういう考え方、さっぱり共感できなかったのに年齢を重ねて年々保守的になってきたからか家福の行動がわかるようになってしまった。なんだって向き合うのって苦しいし壊したくないなら尚更、もうそれに感情を激しく動かして傷つきたくないんだよな。向き合うことから逃げたがために倒れた妻の発見が遅れてしまったことへ募る後悔にだってまた向き合わず逃げれたかもしれない。それでも目の前の芝居と1人のドライバーとの出会いを経たことで自分と向き合いひとつの答えに辿り着く。それを丁寧に表現するには180分の上映時間は決して長くなく、なんだか人の心の整理に付き合ってたような時間だった。

ふとツイッターでみたある話を思い出した。車は相手の顔をみなくて済むのでお互いの話ではなく一緒に見てるものを話すことができる、だから相手を味方だと思って安心するものなんだとか。確かに車って2人で乗っても向きあわない異質な空間。そう思うとこの車を手放す未来があって良かったとも思った。向き合わないということがかえって自分を縛りつけてしまうことがあると覚えておこう。