このレビューはネタバレを含みます
村上春樹作品って意味不明だけど何故か面白くて読んでしまうので、読了後悔しい!!!って気持ちになるんだがこの映画もその点同じでした。まったく理解できてない気がするが感動して泣いてしまったことが悔しくてたまらない!!!
原作は読んでません。
大まかなあらすじは意外と単純というか、展開が読める部分も多かったんですが、登場人物のひとつひとつの言動や演出が難解でした。
以下、私の勝手な解釈ですが、これは「自分自身の感情に向き合う」ことがテーマなんだろうなと。主人公の家福は妻に裏切られたことへの傷つきを受け止めることができず、見て見ぬふりをしているうちに妻を亡くしてしまう。(その妻もおそらく、娘を亡くした喪失感に耐えられず、性行為の後に別の人格に変わって物語を語ることで自分を癒やしている?のかもしれないがこの辺はよく分からなかった)
そして、ドライバーの女の子が母親を間接的に殺した罪に向き合う旅に同行することで、家福は自分の傷つきや妻への思いを受け止めることがようやくできるようになる。心の強さを分けてもらえたんだと思う。
で、一方の高槻くんは感情をモロ出しするタイプで、ついには人を殴って舞台を降板してしまうんだが、この人存在は主人公と対比的に描かれてるんだと思う。
家福さんは舞台俳優たちに、台詞を棒読みにすることを強要するし、家福さんがいつも車の中で聞いてる妻の録音したセリフのテープも棒読みだけど、あれはその人の無意識的な感情がセリフに反映されてしまうのを防ぐために、あえてまず感情を一旦全部捨てて、真っ白になってから役になりきって感情を載せろ!という手法なのかな?と理解した。妻を寝取った高槻への嫌がらせにも見えたけど……
だからといって登場人物の大半が棒読みなのはよく分からなかったが、意図的なものだろうなと。感情がテーマだから雑音になりそうな感情は全部消したのかもしれない……
終わり方もよく分からなかったけど、妻の死を乗り越えた家福と、母の死を乗り越えたみさき、というハッピーな終わり方と理解してよいのだろうか……?
高槻が家福と車の中で長々と語り合うシーンが凄くよくて、でもなんで良いのかと聞かれると分からない(悔しい)
「結局のところ僕らがやらなくちゃならないのは、自分の心と正直に折り合いをつけていくことじゃないでしょうか。本当に他人を見たいと望むなら、自分自身を深くまっすぐ見つめるしかないんです。」ここのセリフが刺さったのかも。
ドライバーのみさきの崩れた家に花を投げるシーンからの展開でぐっと泣けました。